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若手プロに知ってもらいたいこと 麻雀プロが異業種で活躍することについて

【立場によって意見は変わる】

 最高位戦日本プロ麻雀協会の佐々木康彦プロからのリクエストがあったので、タイトル通りのテーマについて書くことにします。
 ほかにも様々なリクエストがあったのですが、これが「バシッ」ときたんです。0.03秒ぐらいで「この話から派生してこれが書ける」と脳が判断したので、最初はこれにしました。
 「異業種で活躍」なので「食うために渋々アルバイトを続けている」とかではなくて、プロ雀士でありながら、グラビアで水着姿を披露してみたり、歌手デビューしてみたり、洋服のデザインをやってみたり、実況の仕事をするなど「他の特殊な業界での活躍をすること」だと定義して考えてみましょう。
 もちろん、私がやっているような、文章を書く仕事もこれに含まれると思います。
 佐々木さんからのお題は「黒木さんにはどう見えるか」だったので、正直なところを申し上げますと「麻雀プロなんだから麻雀だけやっとけばいい」ですよ。
 だって他の業界のプロの人って、だいたいは一心不乱にその専門分野のことに打ち込んでいるじゃないですか。そうしないと、よほどの天才でもない限り業界で生き残れないじゃないですか。
 必死で努力して毎日そればっかりやって、でも年齢とかではじき出されて引退して、それからほかの好きなことをやる。こういうのが「一般的なプロ競技選手像」ですよね。
 プロ野球選手の山本昌さんが現役時代にラジコンの世界で活躍するなど、例外はありますよ。でも、だいたいは「その道一本」が普通なんですよ。
 そういう常識というのもありますし、私の個人的な好みで言うと「麻雀一本だけやってて、食えなくてヒーヒー言いながらも、それでも麻雀しかやらないバカみたいな人」が好きなんですよ。見ていて応援したくなるんです。
 でも、それは「プロ麻雀業界やプロ雀士に対して何の思い入れもない、ただのオッサンだった場合の私」の意見です。その人が家賃とか光熱費が払えなくなってしまおうが、プロ麻雀業界がボロボロになろうが、どうでも良いからこそ言える意見なんですよね。
 実際にこの業界の実情を知ってしまったら、そんなことは言っていられません。
 「本当、悪いけど、みんな頑張って」と、実際、後輩たちに言いながらやってきました。
 25年ぐらい前の麻雀界には、外に出せる話題は「二階堂姉妹」しかありませんでした。「20歳前後の美人姉妹が麻雀のプロをやっています」というのが唯一の武器だったんですよ。
 だから彼女たちには方々から出演依頼がありました。それでも、今の10分の1以下ですけどね。
 で、オファーがあったからには食らいつかなければなりません。姉妹に民放のバラエティ番組に出てもらって「麻雀プロというのがいるので、世間の皆様、ちょっとでも良いから知ってください」という宣伝行為をやってもらわなければならなかったんです。
 ほとんどの場合においてギャラはもらえませんでした。もらえても1万円とか2万円とかです。3万円あったら「すげえ」という感じでしたね、当時は。
 そういう条件の仕事なのですが、姉妹は嫌々ながらも引き受けてくれました。多分、めちゃくちゃ嫌だったと思います。お金は大してもらえないし、別に出たくないし、そんな暇あったら麻雀打ちたいしっていうのが本音ですよ。
 まだ、上昇志向があったり、ミーハー的性質があったり、自己顕示欲が強かったり、何かしらあれば出演するモチベーションも上がるのでしょうけど、彼女たちは「ただ生きるために麻雀をやるしかない姉妹」でしたから。
 それでも出演して頑張ってくれたのは、やっぱり麻雀が好きだったからだと思います。それと、私とか馬場裕一さんが、金ももらえないのに、小娘に頭を下げて頼んできたからだと思います。
 彼女たちなりに「こいつらの頼みなら、まあ聞いてやるか」というのがあったのだと思います。物事の好き嫌いはハッキリしていますが、性格はめちゃくちゃ良い子たちですから。

【グラビアで掴んだ高宮まりの夢】

 麻雀プロ業界が「ただ麻雀を打っていれば良い」という状況になるには、まだまだ時間がかかると思います。サイバーエージェントの藤田晋社長のおかげで「Mリーグ」ができて、少なくとも「麻雀と関係ない仕事をしなくても食べていける人」は一気に増えたと思います。
 もちろん、それでも他の業種のプロと比べたら、ファンサービス的なイベントに駆り出される頻度は高いと思いますが、以前と比べれば格段に「プロらしいお仕事」が増えているんですよね。
 この現状に至る前、10年以上前ですが、高宮まりプロに「水着の撮影に挑戦しないか」という話がありました。
 もしかしたら、これが普通のグラビアイドルDVDのお仕事だったら、日本プロ麻雀連盟として「受ける」という判断をしたかどうか分かりません。でも、この時のオファーが「MONDOTV」からだったんですよ。

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