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私が広報部長を辞めた理由

【石を投げ返す広報】

 日本プロ麻雀連盟での私の広報部長としての活動はかなりおかしなものだったと思う。
 普通の会社の広報は、Twitterでエゴサして、自分から「うちの会社はそんなとこちゃいまんねん」と話しかけたりはしない。
 まだそれだけなら良いが、たとえば「お前らがパワハラ集団だからだろ、ボケ」などと乱暴な口調で話しかけてくる輩には同程度より、ほんの少しだけ優しい口調で「お前パワハラの定義しってんの?」と返したりしていた。
 そんな広報あり得ない。普通の会社なら何かしらの処分がある。そんなことは重々承知の上でやっていた。
 でも、一流企業のようにスマートにやっても面白くないと私は思っていた。
 普通の会社ならすべて無視である。
 でも、私はとりあえず会話は試みた。
 相手は広報部長だからかプロ雀士だからか、反撃しないだろうと思って安全な場所からのつもりで石を投げる。私は同じぐらいの速度より、ちょっと手加減して投げ返す。
 初見の相手は少しはびっくりするだろう。投げ返されないと思って投げているからだ。
 ここで小心者は黙ってしまう。これならスルーでも一緒だった。むしろこちらが汚い言葉を吐いただけ損になる。
 中には何回かキャッチボールになる相手もいるが、途中から急に黙ってしまうことも多い。自分から石を投げておいて、やり返されたら面倒くさくなるのだから勝手なものだ。
 まだそれならいいのだが、途中から石ではなく、汚物のようなものを投げてくる輩もいた。また、石であることは変わらないのだが、私の方ではないところに投げて「取りに行け」という横暴な人もいた。だいたい、そういうのは「嫌がらせ目的」だと認定してブロックする。
 ここまでを見ると「だいたいしょうもない連中なんだから投げ返さずにスルーすればいいのに」と言われるのだが、それだと面白くないのだ。
 ごくまれにではあるが、徐々に会話になってきて、最終的には理解してもらえたり、私の方が新たな発見をすることもある。
 それが嬉しくて、私は一見「変な人」とも会話をするようにしている。あくまでも、Twitter上で、であるが。
 それに「会話するに値しない人」と話しているテイで、実は「これはデマです」とか「こういうこと言ってる人、実はめっちゃ恥ずかしいですよ」というアピールになることもある。
 人は天邪鬼なもので、面と向かって「女の子に麻雀おしえたろかーっていうのキモいよ」と言われると「俺はそんなことやってない! 俺のはセーフだから明日もやる!」となるのだが、誰か別のキモい人が「あなた、キモいよ」と言われているのを見ると「やべ、ちょっと控えよう」という気持ちになりやすい。
 こういうのは私の経験則でしかないが、そういうものだと思って今まではやってきた。
 似たような心理で「他人が怒っているのを見ると冷静になる」というのもある。
 これは馬場裕一プロと私、森山茂和プロと私など、そういうコンビで何かに当たった時「先に怒った者の負け」みたいなのがあった。
 たとえば私が先に怒ったら馬場さんとか会長が冷静になって「おい、待てって」となるし、その逆もよくあった。不思議なことに、あまり、2人同時に怒るということがなかったのである。
 普通のプロ雀士たちは一般人からボロクソ言われても言い返せない。自分のイメージダウンになるし、応援しているファンの方から見苦しいと思われてしまう。
 だから黙って我慢する。我慢するとどんどん「負の感情」を溜め込んでしまう。
 だから私が先に怒ってみた、ということもあった。私が見苦しいところを見せることによって「あ、あいつアホやん。ああならないように自分は紳士淑女でいよう。恥ずかしいし」となるのではないかと、そういう期待もあったし、一種の小さな社会実験でもあった。
 本当にどんな意味があったかは分からないが、私なりに考えてやっていたつもりである。
 はたからは、ただ初老がキレ散らかしているように見えたかもしれないが、実は本当にキレたことなどなかった。

【そういう時代じゃない】

 言うまでもないが、私のやり方はデメリットも多い。
 やっぱり、考え方がまともで常識のある99%の麻雀ファンからすると、私が変な人とやりあっているのは見苦しいだろう。道に落ちているゴミと変わらないと思う。
 面白いと思ってくれる人がいる反面「そういうのは要らないよ」という民度の高い人もたくさん存在しているはずだ。
 だからその部分は常に気になっていた。すんません、すんませんと思いつつ、必要悪だからしゃあないと言い聞かせてやっていた。
 私のフォロワーさんの中には綾辻行人先生や森川ジョージ先生、藤田晋社長など、精神レベルがブッダ並に高い、人間300周ぐらいやってそうな人たちも多い。そんな人たちの目の前で、人間3周目ぐらいの私が「人間初めてなんで昆虫レベルでウザ絡みしてすんません」っていう輩と言い合いをしているのを見せるのは、本当に恥ずかしかった。

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