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ケネス徳田伝説 雀荘であった愉快な人々事件

【なぜか気に入られる】

 徳田はただ生きたいように生きているだけなのだが、妙に一部の人から気に入られる。
 麻雀番組を制作しているCという会社があり、麻雀企画集団バビロンは25年ぐらいずっとお世話になっている。
 そのCの創立メンバーでもある映画監督のS氏が忘年会で「お前ら最近、Cに対する愛情が薄れてるよ!」と酔っぱらって言い出した。「たとえばだけどさ、今日CのTシャツ着てるのは俺しかいないだろ」と言う。
 周囲の若手社員たちが「いま真冬だしTシャツはちょっと…」と言う中、近くにいた徳田が「あ、おれ着てますよ」と上着を脱いだ。徳田は、現場で借りたCのオリジナルTシャツを勝手に持って帰り、下着として使っていたのだった。

 「いやいや、あれ、勝手に? どういうこと? ウチのスタッフTシャツ、あげたわけじゃないんだけど!」

 私のそばにいたCのプロデューサー氏は少し怒っていた。
 
 「現場で貸したTシャツ勝手に下着にして、しかもSさんに気に入られてるし、なにあれ」

 とあきれていたが、Sさんはなぜか徳田を気に入り「お前だけだよ! Cの精神を受け継いでいるのは!」と言って徳田のグラスにビールを注いでいた。
 CではなくBの社員なのに。

 Cの仕事で音楽ビデオの撮影現場を手伝っていたこともある徳田は、大物アーティストや芸能人と、焚火を囲んでキャッキャと楽しく会話していることもあったらしい。
 
 徳田のことをよく知るプロデューサー氏は、怖くて会話の内容を聞くことができないので、見て見ぬフリをしていたという。

 また、そういう現場では、スタッフは極力目立たないような色の服を着てくるのが常識なのだが、徳田は常にカラフルなアロハを着てくるから、スポンサーとかクライアントのエライ人だと勘違いされることも多かった。

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 あるアートの師範代がいて、その人の撮影の際、徳田が車を運転して現場までお連れしたことがあった。
 その際にどんな会話がなされたかは恐ろしくて聞かなかったのだが、なぜか師範代に気に入られた徳田は、いつもは必ず一番弟子がやる仕事(顔や身体におしろいを塗る作業)を「今日は徳田君にやってもらおう」と言われたそうだ。

 
【初めて取材された日】

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 有元美保さんという漫画家さんの「雀荘で遭った愉快な人々」という連載があった。
 タイトル通り、麻雀屋さんにいた「クセの強い人のエピソードやおかしな事件」を紹介する漫画で、読者からもネタを提供してもらっていた。
 また、麻雀プロからネタ提供されたものを漫画にすることもあり(見本は瀬戸熊直樹の回)、遂に徳田が取材を受ける時がきた。

 有元さんと女性編集者のYさんが竹書房で徳田の「こんなことがありましたよ」「あんなことがありましたよ」という話を1時間以上聞いた。
 
 取材が終わって、徳田は意気揚々と事務所に戻ってきて「すげえネタたくさん披露してきたりましたわ」と言った。
 
 その後も少しだけ雑談して「じゃ、今日は帰ります」とゴキゲンなまま上がっていった。
 取材をされたのが初めてで嬉しかったのだろう。

 しかし、徳田が帰った直後、竹書房Yさんから事務所に電話があった。
 

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