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二階堂瑠美はどんな打ち手なのか(文・黒木真生)

【ここから何を切る?】

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 いきなりだが、この手牌から皆さんなら何を切るだろうか?
 ほとんどの人がに手をかけると思う。
 だが、二階堂姉妹の姉・二階堂瑠美を切るのだ。

 一瞬「えっ?」と思うだろうが、そう打つのが瑠美だ。
 私も驚いたが、検証してみるとそんなに悪くないことがわかる。いや、むしろ良いのかもしれない。

 打としておけば、

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カンを引けば当然文句なし。六九を引いてしまったらカン待ちの345の三色。これは不満が残るが他の打牌でもこうなりがちなのは変わらない。
 が、この打牌が優秀なのは、いわゆるヨレヅモに対応しやすいということなのである。
 ツモなら打でスピードを重視しても良いし打でピンフのイーシャンテンに構えてお茶を濁しても良い。
 ツモなら当然打で好形かつ打点力もあるイーシャンテンになる。
 ①④③⑥をツモった時も、その時点でスピードをとるか打点をとるか、考えることができるのだ。

 私はを切るのだが、瑠美の答えを聞いて感心した。自分とは違うけど、そういう構え方も良いなと思った。

 打②は凡庸だ。

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 ツモでドラそばのカンで打点は2,600点というショボいテンパイが待っている。
 もちろん、ツモと来ることもあろう。だが、それなら打と変わらない。いや、ソバテンにならない分、先にを切っておいた方が有利だ。

 つまり私より二階堂瑠美の方がはるかに麻雀がうまい。

 【安藤満が認めた少女】

 プロ麻雀業界に入ってきたのは妹の亜樹の方が先だった。
 故・安藤満プロに麻雀を習い、18歳でプロテストを受けて合格。1年後、1つ年上の瑠美も安藤プロの手ほどきを受け、19歳でプロテストを受験し合格した。

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 当時、安藤プロは瑠美の麻雀を見て「センスは亜樹よりある」と言った。
 私は初めて瑠美の麻雀を見た時、ゆったりしすぎていて、それで勝ち切れるのかなと思った。
 でも、打牌がことごとく美しかった。
 一瞬、何を考えているか分からない打牌も、よく局面を見てみると「答え」があった。
 そういう場合の瑠美の思考は「将来に備えての受け」である。
 手が伸びた後に答えが分かる場合もあった。あの手がこうなったのか。と感心させられるだけではなく、その一見「疑問手」と思われる打牌で処理しておかないと、鳴かれていたり、放銃になっていたりする。
 
 こんなきれいな麻雀があるのかと思った。
 
 タイプは少し違うが、藤崎智プロの麻雀を初めて見た時と同じぐらいに衝撃を受けた。
 
 私の麻雀は短絡的で即物的で俗物的である。美しさのカケラもなく、身もふたもない。夢もなければ華もない。じゃあ実はとれるのかと言えば、ただの確率通りに、普通にアガれたりアガれなかったりだ。
 そんな麻雀に価値はない。
 特にプロの世界において「普通に打って確率通りにアガれたり勝ったり負けたり」では存在価値ゼロなのである。

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