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若手プロに知ってもらいたいこと プロ団体の強さを論じる意味

【まったく意味がない】

 オリンピックをやっているから「ナショナリズム」みたいなものが人々の思考回路に入り込みやすくなっているのでしょうか? ネット上では麻雀プロ団体論が展開されているようです。
 麻雀の戦術にプロ団体は関係ないと思うのですが、やっぱり五輪で「国」みたいにまとまったものをテレビで見ているから、何となく「団体」というワードが強く出てくるんでしょうか。
 今Twitterで「どの団体が強いか」みたいな話をしている人が多いのですが、この議論自体ナンセンスだと私は思います。
 もちろん、団体ごとに強い選手の所属人数が違うということはあると思います。
 たとえばですが、歴代最強位の人数を団体ごとに数えると以下のようになります。

1位:日本プロ麻雀連盟 11人
2位:最高位戦日本プロ麻雀協会 4人
2位:日本プロ麻雀協会 4人
4位:RMU 2人
5位:麻将連合 0人

 なんでこんな数字を出してきたかというと、最近たまたま集計したんですよ。
 3月1日に発売される「近代麻雀」の付録小冊子が、プロテストの問題と各団体の合格率、受験料、年会費、所属人数などをまとめたものでして。で、「近代麻雀」なので歴代最強位を団体ごとにまとめたのですが、その数字を拝借したというわけです。

 しかし、こういうランキングを作ることに意味があると思いますか? まったくないですよね? これだけ見て「プロ連盟が最高位戦とプロ協会の3倍強い」って言う人がいたら「知力が足りない」って思うでしょう。だからこういう議論に意味はないんです。
 たとえばですが、麻将連合から最強位は出ていませんが、だからといって団体として「弱い」ということにはなりません。むしろ、プロテストの難易度やプロ認定基準の厳格さを考えれば「平均的な雀力という観点では麻将連合のプロがもっとも信頼できる」と私なら考えます。
 あくまでも、このランキングから分かるのは「最強戦でプロ連盟の選手が多く勝ってきた」というだけなのです。
 ちなみに、プロ連盟の11人の内3人は最強位になった当時は連盟にいませんでした。アマ選手として優勝してからプロ連盟に入ったり、長村大が入ってきたから連盟の人数が3人増えているのです。逆に、連盟時代に最強位になった2人の分が差し引かれていますから「最強位(当時)」とするのであれば、連盟は10名で、同じ同じ事情でRMUは1名となります。まあ、詳しくは小冊子をご覧ください。

 ここまで丁寧に説明したとしても「連盟に都合の良い数字を出してきた!」という反論があると思われますので「Mリーグ」での通算個人成績でも比較してみましょう。無意味ですが、無意味であることを分かりやすく説明するために一苦労するのです。

1位 麻将連合 2
2位 RMU 4
3位 プロ協会 9.5
4位 プロ連盟 19.75
5位 最高位戦 20.6

 これは、辺六筒さんが公開しているスプレッドシート

にある「通算ランキング」のデータを基に算出した、各団体の平均順位です。
 麻将連合は小林剛プロただ1人。RMUと日本プロ協会は2人ずつ。最高位戦は10人でプロ連盟は22人です。連盟には契約解除となった3選手の成績も含まれています。成績が良ければ契約されていたわけで、辞めた選手たちの順位は低いですから、連盟の平均順位はそれによって少しだけ悪くなっています。
 
 という前提でこのランキングを見て「最高位戦より連盟が強い」とか「麻将連合最強」って言いますか?
 まったく意味のない不毛な議論ではないでしょうか。

 麻雀は個人競技です。プロ団体ごとにどこが強いとか、どこの麻雀がどうというのはナンセンスなのです。
 Mリーグのようにチーム戦をやっているなら「○○チームは強い」という議論になると思いますが、そこで連盟が強いとか弱いという話をしている時点で、その人は連盟への愛か憎悪の感情に憑りつかれているんじゃないでしょうか。

【ルールや文化の違い】

 もちろん、団体ごとに歴史や成り立ちが違うので、文化的な差異というものはあると思います。
 また、先輩たちから受け継ぐものがあるのかもしれません。
 でも、それはごく一部の選手じゃないでしょうか?
 最高位戦の近藤誠一プロは、最高位を10回獲得した飯田正人プロの遺志やファイトスタイルを継ぐ選手として有名です。
 荒正義プロは若い頃、灘麻太郎プロの背中を追いかけてきましたし、馬場裕一プロは小島武夫プロに憧れて麻雀界に入ってきました。
 最近の若い女性プロの中には「二階堂亜樹プロや魚谷侑未プロみたいになりたい」という人も多いようです。
 でも、それだけで「連盟は強い」とか「最高位戦が強い」という話につながるとは思えません。「最高位戦はみんな飯田さんみたいな打ち方だ」とか「連盟は小島先生みたいな打ち方だ」というのも変でしょう。
 今、そういう議論をしている人たちは、そのほとんどが「ただの印象」や「ネット上で誰かが知ったかぶりして言った話」をもとにして好き勝手なことを言っているのだと思います。
 この前も、古川孝次プロが鳳凰位決定戦で鳴きまくる姿を見て「連盟内で嫌われないんですか?」と聞いてきた人がいました。

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