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ケネス徳田伝説⑨ ティッシュ1枚で壊れるパソコン

【スタンハンセンのブルロープのように】

 徳田はノートパソコンを持ち歩いて仕事するのだが、だいたいはガムテープとかビニールテープで補修されている。新しいのを買ったと思ったら3日もするとボロボロになって、テープだらけになる。
 初めて見た人は驚いて「どうしたんですか?」と聞くが、徳田は「ん?」というだけで答えない。
 だいたいはロクでもない理由で壊れたのだろう。説明するのが面倒だったり恥ずかしかったりするから「ん?」しか言わないのだと思う。

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 かなり前の話になるのであるが、麻雀企画集団バビロンのみんなで会社の近くを歩いている時に、徳田のカバンが気になって尋ねた。徳田が肩からカバンをかけていたのだが、肩ひもが長すぎて、ブランブランと揺れ幅が大きかったからである。

 お前それ何が入っとん?

 「買ったばかりのパソコンです」

 ほなもうちょっと肩ひも短くしないとどこかにぶつけて壊れてしまうで。

 それを聞いた徳田は「だいじょうぶだよー♪ ぶつけないよー♪」と歌いながら、バッグをぐるんぐるんとブン回し始めた。
 そしてガードレールに「ガーン!」と打ち付けてしまい「うわああああ!」と叫んだ。

 カバンの中身を確かめ、その場にうずくまり「うわああああ!」と叫び、がっくりと首をうなだれた。

 「買って3日で、買って3日で!」

 戦争映画などで我が子を失った父親がそうするように、地面にひざまづいて壊れたノートパソコンを抱えながら、徳田は私をギロリと睨みつけた。
 まるで「お前が殺した」と言わんばかりの表情であった。

 いや、俺、悪くないやんな?

 徳田は無言でバッグにパソコンをしまい、まっすぐ駅の方へ歩いて行った。

【振動に弱い環境】

 翌日、事務所に行くと、徳田はすでに仕事をしていた。ノートパソコンで何か原稿を書いているようだった。

 そのノートパソコンはなぜかモニタ部分がティッシュ箱に立てかけてあったのだが、私が気にせずそこからティッシュを抜き取ると、徳田は大声を上げた。

 「あああ! 危ない危ない危ない!」

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