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若手プロに知ってもらいたいこと 「面識がある」のと「許可を取った」のは大きく違う

【言質をとれば勝ちではない】

 以下のケース、どう思いますか?

 あなたはある企画を通したい立場だとしましょう。
 その企画を通すにはA社の許諾が必要です。あなたはA社の社長とは知り合いで、連絡先も知っています。いわゆるワンマン社長で、独裁的に物事を決めていくタイプの人です。
 しかし、その企画を社長がOKするかどうか微妙だとあなたは見積もっています。そこで、あなたは社長の機嫌が良さそうな時を見計らって話し、その場で許可をもらおうと考えました。
 あるパーティ会場にその社長がいました。
 オフィスに赴いて企画書を見せながら話してしまうと「NG」の返事になるかもしれませんが、パーティ会場ならイケるかもしれません。あなたは社長にご挨拶して、世間話をした後に、企画の大まかな概要を話しました。
 すると社長は「良いんじゃないですかね」と言いました。
 あなたは、この企画を進めるのに必要なもう1社であるB社に「A社の許諾をもらいました」と報告しました。
 B社はもともと企画に乗り気で、A社の回答待ちだったので、B社の中でGOが出ました。
 
 これが本当に「過去のあなた」がやった仕事だとして、皆さんはどういう感想を抱きますか?

 「うまくやった」と思う人は、いずれトラブルを引き起こします。
 
 なぜならこの件、まったくA社の許諾は取れていないからです。

 まず、ワンマン社長だというのは、あなたの勝手な思い込みかもしれません。その人の下で働いてみたら、実は部下の意見を尊重する人だったりするかもしれないのです。
 
 仮にその社長が完全な独裁者だったとしても、パーティ会場での立ち話で「良いんじゃないですかね」という言質をとっただけで「許諾を得た」と考えるのは無理筋です。

 本来、企業間の取引にはちゃんとした契約書が必要ですが、実際にやっているのは大きな会社だけです。零細企業同士の取引で契約書を巻くことはほとんどありません。
 たいていは口約束がちゃんと実行されていくのですが、でも「許諾」が必要なケースにおいては、さすがに「立ち話」を「言質」とするのは強引すぎます。
 メールでもLINEでもいいので、何らかの「証拠」を残しておかねばなりません。
 ただ、そうやって「証拠」が残る場合は、この例のような「インチキ」ができなくなります。ふわっとした情報だけで「許諾」を引き出そうというような虫の良い方法は取れないんです。
 逆に言うと、こういった「ふわっとした話」で人を物事に巻き込んでいく人は「詐欺師」の素養を持っていると思って警戒しましょう。
 誠実に仕事をする人は、ちゃんとオフィスに書面で企画書を送ってきます。

【実際にあった恐ろしい話】

 なぜこんな当たり前の話をしたかというと、昔から麻雀界では、こういった仕事のやり方をする人によって何回かトラブルが起きてきたからです。
 
 最もひどいケースでは、私が敬愛する2人がしばらく大喧嘩状態になりました。
 本来、両者はウマが合うと思っていたのですが、この件によってしばらくの間、犬猿の仲のようになってしまったのです。

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 B社は「許諾はとれたはずなのに、後からA社が覆した。ひどいよA社!」と思い込んでしまいました。実際、B社は騙されています。被害者です。
 A社の社長は「企画内容が面白そうだねという意味で、良いんじゃないですかと言っただけであって、許諾を出したつもりはない。企画を精査した上で、とても許諾を出せる内容ではない」と主張しました。A社の社長が言っていることも、もっともだと思います。
 だからこれ、両社とも全然悪くないんです。
 悪いのは間に入った人ですね。彼が自分の立場が悪くなることを恐れ、ウソにウソを塗り重ね、どんどん関係を悪化させてしまったのでした。

 その影響は本来関係のなかった別の会社にまで飛び火し、その周辺の人間関係さえもおかしくしてしまったのです。
 
 そして最近、少し似たような話がありました。

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