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リーチは思考放棄(文・井出洋介)

麻雀はたいていの人が「おもしろい」と言ってくれる人気ゲームだ。
正確な数字はわからないが、室内ゲームの中でもプレー人口は今でも1番多いのではないかと思っている。
囲碁や将棋とは違って、相手がどんなに強くても勝てるチャンスがある、初心者でも簡単にアガることができるゲームなのが、まずとっつきやすい。
アガリ役や点数計算を知らなくてもプレーできるし、やりながら徐々に覚えていけばいい。

更に言えば、完璧に覚えなくても、たとえプロ相手でもプレーできてしまうし、勝つチャンスさえあるのだから始末が悪い(笑)

いや、魅力的なゲームだ。
誰でも簡単にアガれるから、自己流でも楽しめる。わざわざ誰かに教えてもらおうとは思わない。でも、自己流には自己流の壁があって、たいていの人はどこかで「勝てない」という悩みを持ち、強くなりたい、もっと勝ちたいと思うようになる。そんなとき、良いアドバイスを言ってくれた人や、本を読んで説得力があったプロや、テレビ対局を見て強いと思った人を師としてその人の打ち方を模倣していくパターンも多い。
でも、麻雀というゲーム、実はそんなに自分が思ったようにいくものではない。
調子が良い時、ツイているときは、いかにも自分の思い通りに事が運ぶように思えることもあるが、それはトータル的に見てどのくらいかをよく考えて欲しい。
ちょっと、見方を変えてみよう。
麻雀のすべてを100とすると、あなたがわかっているのはそのどれくらいだと思うか。
自信のある人は、50とか70とか言いそうだし、自信がない人でも20~30くらいはわかっていると思っていておかしくはない。
私も、かつては結構わかったつもりになっていた時期がある。
しかし、すでに麻雀を始めて60年、競技麻雀のプロとして40年以上やってきて今思うのは、麻雀の正体の10%くらいにやっと手が届くか届かないか、である。
しかし、かつてはわかったつもりになっていた50より、今の10のほうが確実に麻雀の真の正体に近づいていると確信している。

2012年の麻雀最強戦、私にとっては19年ぶりとなる最強戦出場だった。
私が名人戦や最高位戦のタイトル獲得に必死になっていたのは1980年から1990年代で、当時はまだ、対局を報じるのは雑誌などの紙媒体だった。
しかし、この19年の間に麻雀界はすっかり変化しており、対局も生でネット配信されるようになっていた。
そして、このとき私はたまたまリーチをかけることなく、予選、決勝の半荘2回を戦い切ることになった。

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