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【プロの魂】魚谷侑未の過剰な情熱

近代麻雀2015年7月1日号より抜粋

人は彼女のことを強いという。だが麻雀のことしか考えていない変態ともいう。麻雀最強戦2013でも決勝まで進み実績を重ね続ける彼女の過剰な情熱にせまる。

文 花崎圭司

2013年ファイナル準優勝

魚谷侑未~内部に起きた変態


(どうしたものか──)
 私は正直困っていた。
「魚谷侑未を『変態』という切り口で書いてください」という原稿依頼がきたのだ。
 2013年。「息苦しいほどに」という連載で、魚谷侑未がプロになる以前のこと、プロになってからのこと、女流桜花などタイトルを獲り、最強戦に向かうまでのことを書かせていただいた。彼女は本当に包み隠さずいろんなことを話してくれたが、その中で私は感心することはあっても「変態だな」とは思ったことは一度もなかった。
 そして2014年、私は麻雀関係の仕事がなく、タイトルを誰がとったのかをチェックするぐらいで、麻雀から離れた生活を送っていた。
 そこで、この依頼である。「息苦しいほどに」を評価していただいてのことだとは思うが、彼女の「変態性」を引き出すことができるのか? それともやはり変態ではないのか? 不安を抱えたまま、魚谷プロにインタビューした。1年前連載をしていた時、2週間に1度のペースでインタビューしていた同じ場所で。


 私は魚谷プロに、率直に聞いた。
「自分はどのように見られていると思いますか?」
 彼女は少し考え、言った。
「どのように見られてる、とは違うかもしれませんが、魚谷プロの姿勢を真似したい、と言われるようになりました」
 魚谷プロは今や押しも押されぬトッププロだ。女流桜花6、7期と2連覇。8期でタイトルは失うが、9期リーグ戦はぶっちぎりのトップで決定戦に進んだ。他にも女流モンド杯やモンド王座と数多くのタイトルを獲り、内容と結果、どちらも残し続けている。
 若手雀士の登竜門である「野口賞」で、「目指す雀士は誰か?」という問いに、女流雀士の9割が魚谷侑未の名を挙げていることからも、「プロが認めるプロ」であるということがわかる。


 魚谷は続ける。
「4年前と比べると、いわゆる『プロ意識』というものは上がりました。それは、女流桜花を獲ったから急にプロ意識が高くなった、というわけではありません。いろんな方と麻雀をしたり、ブログやツイッターなどで『強かったです』『尊敬しています』『感動しました』という言葉をたくさんいただいて、少しずつプロとしての自覚が作られてきました」
 7年前(2008年)、彼女は「麻雀で生きていく」と決めた日から、誰よりも麻雀に真摯に向かっている。そしてこの4年、支えてくれたたくさんの人が、彼女を本当の「プロ」にしていった。
 現在(2015年)、近代麻雀プレミアリーグが行われている。

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瀬戸熊直樹、佐々木寿人、鈴木達也、石橋伸洋、小林剛、じゃい、藤田晋、そして魚谷侑未。今回のコラムの取材のために収録を見学し、その後の打ち上げにもお邪魔したが、そこで魚谷はにこにこと参加した選手に話しかけていた。
 意外だった。彼女はとても人見知りだからだ。でもそれを越えて、他の選手がどのような思考で麻雀を打ったのか聞きたい。あの局面、どのような考えだったのか知りたい。男性陣が座って歓談する中、彼女は選手全員のところに行き、熱心に話し込んでいた。もちろん真剣に話を聞いているのだが、顔はにこやかだった。麻雀の話ができるのが楽しくてしかたがない感じだった。

「このメンバーで、私が一番格下だと思っています」

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 追われる立場になることが多い彼女だが、ここでは追う立場。だから、もともと格好をつけるタイプではないが、気を張ることなく、楽しく厳しく麻雀の話ができるのだ。
 自分の聞きたいことが聞けたら、誰もいないテーブルに行き、スマホをいじっているマイペースなところも、彼女らしかった。
 その中で小林プロは、自分と同系統の麻雀であり、かつ上のレベルにある。だから自然と注視してしまうと言う。

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