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魔神の父のМリーグ観戦記⑥ 2023年1月3日


作・魔神の母

                  

1 お正月がやって来た

 親戚大集合。大人達は酒宴で盛り上がり、子ども達ははしゃぎ回る。毎度おなじみのお正月。私がもの心ついた頃、呉大空襲の余波で、ぼろ屋に5世帯が暮らしていた。そんなぎゅうぎゅう詰めのお正月。何と賑やかで楽しかったことか。
 その後私はいつしか大人の側に。
 渋川が上京してしばらくの間、正月前には
「渋君(仮名)帰ってくる?」
という従妹達からの声をよく聞いたものだ。
 でも私は思う。きっとこの業界では、盆・暮・正月は忙しいはず(知らんけど)。帰って来た方が心配だ。
 何の前触れもなくひょっこり姿を見せる、それで良い。

2 1/46656の奇跡

 私の家では金曜日の夜はゲームタイムであった。
 麻雀・トランプ・花札・・・・。家族4人で楽しむ。
 ちょうどその日、私は「耳の家みみこ(阿佐田哲也)」に出てくる「ホンビキ」をやろうと提案したのだ。このゲームはそれぞれが1から6までのカードを持つ。「親」はこの中から1枚選んで前に伏せる。そして「子ども」がこのカードは何かを当てるのだ。「子ども」は、第1本命~第3本命と、3枚置ける。第1本命で当たれば3点、第2本命2点、第3本命1点とした。

 妻に聞く。
「あれはいつのことだったかな」
「あれって?」
「ホンビキ」
「ああ、渋君が中学生の時のことね」

 その時妻が「親」だった。妻はまず5を出した。渋川も娘もはずれ。妻は上機嫌。
「さあ、次に行くわよ」とカードを置く。
 皆もそれぞれ3枚ずつ置いた。
 妻がカードをめくる。また5だ。
「どうかしら、また同じ数字を出すとは思わなかったでしょ」
と得意そうな妻。でもこれは、渋川は第1本命に入れていた。
 娘も第2本命で
「当たった当たった」
とはしゃいでいる。
 妻はニコニコしながらも
「あらあら当てられちゃったわね」
と、少しがっかり。
「でも今度こそ」
と少し時間をかけて考え、カードを伏せた。
 その時だった。
 渋川がすっとカードを1枚だけ裏向きにして置いたのだ。
「あら、後2枚は?」と妻。
「いらないよ。これでいい」と渋川。
「かっこつけるなよ」と私。
「いや、これで当たっているからいいんだ」と渋川。
「えーっ‼」と私達3人。
 すると渋川が言う。
「じゃあ解説するね。母さんはねえ、自信の5が当てられちゃったから今弱気なんだ。だからとにかく5から離れたいはず。
もちろん5はもう出さない。
隣の4や6も嫌だ。
ただ一番離れているのは1だけど、1は6枚の数字の最初の数ということで、特別に目立っているよね。
今の母さんは目立ちたくない訳だからこれも外せる。すると残ったのは2か3だけど、5から離れていて目立たない感じなのは2の方だよね」

 そして自分の伏せた2のカードをめくる。
 妻はしばらくじっとしていたが、しかたなさそうに自分のカードをめくる。
 2だ。

 その後、6回続けて「妻がカードを置く→渋川が1点で読む」が起こったのだ。単純に計算して6の6乗分の1=1/46656。
 私は渋川の麻雀の強さの秘密の一つに、この力があると思う。

3 Мリーグ渋川の初打ち。大苦戦‼

 さて、ともあれМリーグスタート。渋川、今年こそ好発進でと願って(パソコンで)応援するが、何と東1局から高宮さんが爆発。6000・3000のハネ満だ。

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