「渋川、牌となじんでいるな」魔神の父のMトーナメント観戦記①
1 Мリーグドラフト会議
妻が急に話しかけてきた。「ねえねえ、将棋の強い人が入って来たのね」
いったい何のことだ。私は面食らう。「将棋の強い人って誰?何?」
妻はあきれたという顔で私を見る。「あなた何も知らないのね。確か鈴木さんって言ってたわよ」
鈴木さん?誰?誰?その鈴木さんがどこに入って来たって?私の頭はまだ混乱。
妻はしかたないなあという顔で言う。「ドラフトよ」
私は更に混乱。何でこの時期にドラフト?ドラフトは11月じゃないか。ドラフトと言えば野球のことしか頭にない。
妻はしんみりとつぶやく。「あれからもう1年経ったのよね」
やっと分かった。Мリーグのドラフトのことか‼
去年のドラフト。私達はかたずを飲んで見守っていた。渋川の前評判が高かったからだ。ただ私も妻も複雑な気持ちだった。だって彼のМリーグ解説は好評で、私たち夫婦はそれで結構安心していたからだ。それがМリーガーになるというのは嬉しいような不安なような。言わば二軒リーチを受けて、もう駄目だと思っていたところにドラのカンチャンを引いてテンパったという感じか。これはもしかしたらいけるかもしれない。でも厳しいよなあって。
まあでも実際にサクラナイツに指名されたときは嬉しかったな。妻と二人で盛り上がったよ。渋川にはおめでとうのラインも送ってやった。そういえば林香さんを家に連れてきたのはその翌月だった。渋川の時間が大きく動き始めたように思えたね。
ところで今回のドラフト。妻の言う将棋の強い人って鈴木大介さんのことだったんだ。昨年の12月の麻雀最強戦2ステージで渋川を破った人だ。私はその麻雀を強烈に覚えている。
鈴木さん、南をポンしてこの形。2000点の手だが、まだ親番も残っているし問題ないだろうと思っていたら何と1索切りのテンパイ崩し。次巡9万を重ね、最後には自風の北をつもり5200のあがりをものにする。これには舌を巻いた。まさに「意志の麻雀」。今シーズン、渋川との対決が楽しみだ。
2 Мトーナメント2023 1stステージ第1試合
このオフシーズン、実は大きなイベントが始まっていた。私はこれも妻からの情報で初めて知った。夕方、妻が「ねえねえ、渋君何か勝ったみたいよ」と話しかけてくる。「えーっそれ何?何か大会が有ったの?」と私。「そうよ。だって勝利者インタビューみたいなものに出ているのよ」と妻。全くよくこんなこまめに渋川の動きをチェックするものだ。一体何の大会かと私は探る。そうか、渋川のツイッターを見れば良いんだ。
これか、こんな大会ができていたのか。これは楽しみだ。半荘2回を戦って上位2名が勝ち上がるというのはすごくわかりやすくて良い。それにこの形式は、緻密に順位を計算する渋川に向いているとも思える。で、この1stステージで渋川が勝ったということか?アベマテレビを見てみよう。ええーっ‼まだ試合やってるよ。相手は、茅森さん黒沢さん河野さん。そうか、渋川は第一試合でトップを取ってインタビューに応えてたという訳なのか。インタビューでは「ついていた」と語っていたが、「はじめから見る」で見直してみると、決してそれだけではないことが分かる。
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