「白鳥―。」魔神の父の観戦記 サクラナイツ最強決定戦 超豪華弁当争奪 前編
1 サクラナイツ、無念‼
今期のMリーグは渋谷ABEMASの優勝で幕を閉じた。渋谷ABEMAS,改めてメンバーを見る。多井さん,白鳥さん,日向さん,松本さん。確かにそうそうたる面々。納得・・・・。でもサクラナイツも何度かABEMASの上に出たんだがなあ。それでも負けは負けなんだ。悔しいなあ。
サクラナイツのファイナル進出が絶望的になった次の日の朝。妻と顔を合わせた時、私は昨日の渋川の四暗刻テンパイの話をしようとした。(惜しかった‼もう一歩だった‼)と言おうとしたわけだ。
すると妻はそれが分かったのか、人差し指を一本唇の前に立て、強く首を振る。(なんもゆうちゃあいけん)という合図だ。
私は喉元まで出かかった言葉をぐっと飲み込み、自分の部屋へ。
負けるって事は何度経験しても辛い。特に麻雀と恋に敗れる辛さは、他の追随を許さない。
でも負けるって、すごく大事なことなんだ。「男一匹ガキ大将(本宮ひろ志)」では「手痛い負けを知ること」が大物になる条件として挙げられていた。この「手痛い」ってのがキーポイント。負けっぱなしの8年間に感謝しながら道の真ん中に倒れ伏す薄影君。馬鹿にされ恋に破れ、四畳半の部屋で一人うずくまる「男おいどん(松本零士)」。
彼らは痛みをしっかりと受け止めることで、自分の弱さを知り、それをエネルギーに変えてゆく。
私が特に印象に残っているのは「スーパーヅガン(片山まさゆき)」の桜田門外さんの次の言葉。
「負けの痛みを受け止める→自分の弱さを認める」のは本当に辛い。でもすべてはここから始まる。
私は実は渋川には少し心配していた。
彼は昔から勝負へのこだわりをあまり表に見せてこなかったからだ。しかし現在、彼のあのニコニコ顔の奥には「痛烈な悔しさ」が間違いなく存在することを知った。
これは大きな安心材料だ。
「自分の弱さを認める契機になる」
これは、人生の縮図と言われる麻雀というゲームの大きなメリットであることは間違いない。
ただ麻雀にはもう一つ大きなメリットがある。長らく忘れていたそのメリットを、私は最近感じ取ることができた。
2 ある日のこと
セミファイナルが終了した後は、特に何も無い日々が続いた。渋川はTwitterで
なんてつぶやいていた。本来ファイナルで埋まるはずの5月の中旬、彼はいったい何をしていたんだろうね。
そんなある日、渋川ファンのAさんにばったり出会った。
「いやあ、すごく面白い対局だったですね」
とAさん。
私は何のことかと尋ねる。
Aさんは、えっ知らないんですかと驚きながらも、丁寧に、サクラナイツ最強決定戦が行われたことを話してくれた。
「それで誰が勝ったの?」
と私。
するとAさんは
「それは言わない方が良いですね。ただ渋川さんは大活躍でしたよ」
とニヤニヤしながら去って行った。
その日は他の何人かからも似たような話を聞いた。一体この対局で何が起こったんだ。
家に帰って妻にその話をする。
すると妻はあの朝と同じように強く首を振って黙ってしまった。ふーん、妻は結果を知ってるんだ。全くどこで情報を仕入れてるのやら。まあとにかく見てみよう。YouTubeでサクラナイツと検索し、恐る恐る動画を開く。何々、「超豪華弁当争奪 サクラナイツ最強決定戦」。そんな企画があるのか。
https://www.youtube.com/watch?v=CCyOHM1Yb6k&t=7823s
ええ?再生数71万だって‼
おーっ日吉さんに白鳥さん、そして森井監督‼
超豪華な解説陣。
あら、渋川が何か言ってる。「この指輪に誓って勝ちます」だって。本当に良く言うよ。
これは勝たねばなるまいぞ。
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