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雀鬼桜井章一が多井隆晴に「勝負の極意」を語る


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近代麻雀2016年3月1日号より特別掲載

桜井さんはこの企画を「対談ではなくお話だ」と語った。そしてお話をする理由は「良い麻雀を見たいからだ」とも。既存のプロ団体とは一線を画しながらも、それでも伝説であり続けてきた雀鬼が今、トッププロに伝えたいこととは?

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理想はがっぷり四つ。

--桜井さんはDVDで見た多井プロにどんな印象を持たれたんですか。
桜井 おもしろい。お笑いの人(笑)。ただ、解説はそんな感じだけど麻雀は結構、慎重というか、神経質な感じだよね。
多井 解説の時は見ている方を飽きさせないようにとか、色々ありますので。麻雀の方は牌を握ると感情が動きやすいといいますか……。
桜井 まあ、しょうがないよな。解説はまずくても褒めてやらなきゃならないしな。悪いところは見ないふりしてなるべく良いところに目を向けてやんないと盛り上がらないもんな。ただ、相撲の北の富士さんはバチッと言うじゃない。「駄目だよ、あんな勝ち方は」とか。舞の海さんは違うんだよ。どちらかというとカバーするんだよ。
多井 負けた相手も立てながらみたいな。
桜井 そうそう。それもひとつのやり方だけど、やっぱり北の富士さんのように本質をついた解説の方に俺は共鳴しちゃうんだよ。
多井 悪い勝ち方もあるぞっていう。
桜井 例えば横綱が立ち会いでぶつかるのを避けて勝ったら周りがシラけるじゃないですか。激しくぶつかりあうのが相撲本来の魅力でしょう。でも、麻雀に関してはそうはいかないんだよ。ヤバいことを避けて避けて、ぶつかりあいなんでほとんどない。
多井 理想はがっぷり四つ。
桜井 そりゃそうですよ。でも、麻雀は降りるって考えが浸透しちゃったから。当たると(振り込むと)恥ずかしいとかね。
多井 まだ若い頃にテレビ対局で解説の方に「なんであんなのに放銃するんだ」と言われて、次の対局では少し縮こまったりみたいなことはありましたね。
桜井 それは、そいつの方がロクなもんじゃないんだよ。
多井 今プロになって20年ちょっとなんですけど、数をこなして、何回か勝つようになってからは自分の思いどおりに打った結果、誰かに何か言われても「これが僕だ」と言えるようにはなったんですけど。まあ、最初のうちは色々書かれましたね。
桜井 今のプロは『これが僕だ』って思いが強いんだよな。結構、そこに関しては頑固な部分がある。僕の部分を固定観念にしといて、それで良しとしている。この間の対談でそれを感じたよ。
多井 小林(剛)ですか。

桜井 うん。勝負事には変化があるから、もうちょっと柔軟性をもたないと。決めちゃいけないって部分はあると思うんだよね。まあ、今の人は固定するところから始めないと、その先に行かれないのかもしれない。ところで最近は麻雀プロになんかネーミングがついてるじゃない。スーパーデジタルみたいな。キミはなんて言うの?
多井 僕は大変申し上げにくいんですけど、キャッチフレーズ的なのは『最速最強』と……。
桜井  おおっ!
多井 申し訳ございません! 

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