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小林剛「今好調の理由は2文字」

文・青森りんこ

2文字でいいかなぁ

1/18、Mリーグで小林剛プロが自身3連勝目を果たした直後、金本編集長から連絡があった。

「小林さんの好調の理由、聞いてもらえないですか?序盤すごい負けてた(344スタート)のにいまや出れば勝つみたいな雰囲気になった理由」

この文章を見て、返信を躊躇してしまった。
なぜならば、小林プロは「好調・不調」という目に見えない事象を好まない方というイメージがあるためだ。実際に今までも記事構成のためインタビューをしたが、「こういう表現はあまりしたくないのですが」と言われることが何度かあり、「好調・不調」もその表現のうちの一つのように思われるためである。

ご本人に「好調の秘密を教えてください」と聞くと呆れられてしまうだろうか。
いや、ご本人に正直に話してみよう。

――金本さんから連絡があって、最近の好調の理由を、2000文字程度の記事にまとめて欲しいと言われたのですが……

小林「『好調の理由』ねぇ。うーん、2文字でいいかなぁ」

――2文字というと……

小林「偶然です。はい終わり」

――な、なるほど。しかし2文字だけ持ち帰るわけにはいかないので、もう少し聞いてもいいでしょうか。

小林「うーん、どんな話ができるかねぇ」

――そもそも、ご自身で「好調」とか「不調」とかって考えられますでしょうか。

小林「そもそも、まず考えないねぇ」

――ちなみに実際以前と最近でメンタル面の違いはあったりするんでしょうか?

小林「ないねぇ」

――例えばラスが続いてしまったときとトップが続いたときって何か考え方や打ち方などが変わったりとかはしましたでしょうか?

小林「全然変わってないねぇ」

――普段の生活などが変わったというのは……

小林「ないねぇ。むしろ最近の方が忙しいねぇ」

――……2000文字どうすればいいでしょうかね。

小林「どうしようかねぇ。そもそも『好調』ってどういうことだろうね。僕の着順は今シーズンの1戦目から17戦目まで344とかからはじまって最近の成績は111のようなんだけど(※)、これを金本さんが10・11月の8戦と12・1月の9戦というように勝手に区切って、『こっからここまで好調、ここまでは不調』とか言うのが変じゃないかな。他人の17戦を誰かが勝手に好みの期間で区切って『最近好調だ』っていうのはおかしいよね」

今シーズンの小林剛プロの全成績

34413323232132111


――勝手に、というのは、数戦程度じゃなくてシーズン単位で見て欲しいということでしょうか。

小林「そもそも『好調』って、何を持って好調って言ってるんだろう。成績だけ見て『ここが好調だ』というと、たとえば『切り間違いがあったけどトップを取れた』というのも好調になってしまうよね。
それはおかしいと思うし、そのように『たまたま良い結果が出た』=『好調』なのか?という話だよね。『不調』については、体調が悪くて正しい牌を打ててないとかなら良いと思う。でも正しい牌を打って、偶然に恵まれず負けたのを不調というのはおかしいと思うね」

――確かにそうですね。では今回の『好調の理由』というのは特にない、ということなのでしょうか。

小林「負けた理由、勝った理由は単純で、細かい偶然が起こったっていう結果だけで、原因も何もないんだよね。『ツイてたから勝った』とか、『すごい偶然が起きたという結果が続いたから勝った』って言ってもいいんだけど、特に何か特別な原因があって勝ったみたいなのとは違うかなぁ」

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「最近」というくくりがおかしい

――打ち方やメンタルも勝ちが続いてる時、負けが続いてる時で特に変わっていないということなんですね。でもメンタルを変化させないというのもすごく難しそうに思います。メンタルを一定に保てるコツなどはありますでしょうか。

小林「まず、『勝ちが続いてる』『負けが続いてる』というように現在進行形で書くのが間違いで、『勝ちが続いた』『負けが続いた』と過去形になるね。
だから、『最近負けてる』じゃなくて『最近負けたな』のような感じかな。だから負けてる時だなとは思わなくて、負けたわけです。だから『負けてる時はどうするのか』というのは、そういう質問もよくあるし、わからんでもないけど、負けたときは別に昨日負けようが去年負けようが関係ないでしょ。最近とかいうくくりでまとめるのかがおかしいね。勝ちも負けも1個1個独立してるものだしね。
『偶然が起こった』っていう一つの結果だけが残っているので、特別何かメンタルに影響があることもないかな」

――負けが続いても、メンタルも打ち方も変わらないと。

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