しみったれ【文・長村大】その16
ドラ2s
すでに持ち点はハコ下、トータルのポイントも大きくマイナスしている。しかも相手はMリーガーの沢崎誠選手、同じくMリーガーでプロ連盟の最高タイトル・現鳳凰位の佐々木寿人選手、元鳳凰位の吉田直選手だ。Cリーガーのおれが、これだけのメンツと戦える機会はそうそうない。
お屠蘇気分も抜けきらない1月の初旬、公式戦ではないが、Focus Mという放送対局で今年一発目の役満となるか。ツモ山に伸ばす手に走るのは、緊張よりもむしろ──楽しさであった。
これより数日前にリーグ戦の最終節が終わり、おれの一年目の公式対局はすべて終わった。とりあえずは一度昇級することもでき、最強戦では予選の決勝に進めた。つまり、全体的には悪くなかったように見える。
だが、おれのようなオールドルーキーにとって「悪くない」ではダメだ。現状維持は後退であり、微進は停滞に過ぎない。持ち時間が少ないのだ。
もちろん麻雀である以上すべてに勝つことは不可能だし、相手もまたおれと同じく全力だ。そんなことはわかっている。わかっていてなお、無理を通していかなくてはならない。
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