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はるかな未来②実況も本気です【文・小宮悠】

【実況という仕事】


私の今現在の麻雀プロ活動のなかで、"実況"はなくてはならない大好きな仕事だ。元来喋ることが好きで、麻雀プロになってから実況という仕事に興味を持つまでさほど時間はかからなかった。

今では、先日開幕した「最高位決定戦」やその他タイトル戦の決勝、トップリーグであるA1リーグの実況など、様々な場面で実況させてもらっている。最近では解説の機会も増えた。

私が実況をするうえで最も大切にしていることは、「視聴者ファースト」と「選手ファースト」この2つに尽きる。

麻雀対局は生モノだ。何が起こるかわからないし、思いがけない展開になることも多い。その中で、わかりやすく快適に観てもらえること。選手の選択や筋書きのないドラマを際立たせること。その2つに重点を置いて実況している。

今の私の実況スタイルに落ち着くまでの勉強法などを紹介していこうと思う。

【初めての実況】


初めて放送実況の機会をいただいたのが、プロ1年目の時だった。今はなくなってしまったが、バラエティ寄りの対局番組だ。

実況として右も左もわからない状態のまま、当日早めにスタジオ入りしようと準備していると一緒に解説予定だった小林剛プロから「1時間前くらいからスタジオにいるから、練習したいなら早めに来ていいよ」と連絡をいただいた。え、天使ですか…?

そうして早めにスタジオに行くと、既に剛さんがいらして、解説室のパソコンで過去の放送を流しながら「じゃあ自由にやってみていいよ〜」と隣で練習に付き合ってくださった。びっくりするほど言葉が出てこなくて固まっていると、こういうことを話すといいよ、こういう言葉は言っちゃダメだよ、と優しくアドバイスをいただいた。

天使やん。

ちなみに実況が言うべきこととされているのが、半荘の始まりの「選手の座順」、局の初めの「東◯局、親は△△、ドラは✕です」という定型文だ。あとはイーシャンテンの手牌やドラドラの手牌などに触れ、和了りが出たら役と打点を速やかに説明する。ーー最初はそれすら知らなかった。

言ってはいけない言葉もある
放送に乗るため、いわゆる放送禁止用語は全て使ってはいけない。例えば差別用語に当たる「目無し」「足切り」など。これらは反射的に言ってしまうこともあるので頭に叩き込んだ。
また日本語として正しくない例としては「降級争い」ではなく「残留争い」など。

麻雀用語も、使わない方がいいとされている言葉がいくつかある。
「シャボ」「リュウハ」などは基本的に使用せず、「シャンポン」「ハツ」を使う。
個人的にはわかればいいじゃん、と思うこともあるが、多くの人が耳にする実況において、正しい言葉を使うことは想像以上に大切なのだ。

この時の実況なんてとても見れたものではない出来だったが、間違いなく私の実況者としての第一歩だった。

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