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下石戟は見えないものを見ようとして【文・須田良規】


<下石戟の出してきた問題>

こんにちは。日本プロ麻雀協会・宣伝部部長の須田良規です。
そんなものはまだないですが、とりあえず自称でやっております。
今日もまあ見てってください。

先日セガサミーフェニックスに当協会の浅井堂岐選手がドラフト指名されましたね。

協会では5人目のMリーガー。全員がA1リーグからの輩出になります。

もちろんそれぞれの団体に素晴らしい選手はたくさんいますが、
こうして協会の仲間たちが一人ずつ認められて有名になっていくというのは、長くいる身としてはとても感慨深いものがあります。

浅井くんはこれからたくさんの対局を見られて注目を浴びていくでしょうから、
今回はMリーガーではない協会の他の選手、下石戟くんについてちょっと紹介してみたいと思います。

麻雀プロというのは毎局毎局思考を公開しながら打っているわけではないので、
実際のところその人がどういう選手なのかというのは、一般にあまり知られることではありません。

普通はタイトルでも取らないと強さの証明にはなりにくいでしょうね。

先日僕はA1のリーグ戦を終えて、同卓だった下石くんとちょっとLINEで話してたんですよ。

そのときに、ふいに下石くんがこんな問題を出してきたんです。

「これ何年か前にA2で代表の五十嵐さんと打ったときの話なんですけど・・・・」

「この日のリーグ戦最終半荘。40000点持ちトップ目がいて、五十嵐さんが25000点くらいの2着目でした。
 この捨て牌で五十嵐さんが親リーチしてきたんですね。
 親の手を読んでみてください」

おー。
おーおー。
やべえじゃん下石くん。

だいたいリーチの全体手牌を切り順で読むなんて結構無理があります。
相手や場の状況によって切る牌も一意に決まらないし、
勝手読みを外したときのデメリットが怖すぎるので、適当に自分の基準で押し引きや安全牌を考える方が無難でしょう。
手牌読みには脳のリソースをフルで使えないものです。勝つための本質って実際そこじゃないですしね。

しかし一所懸命に考えてみれば、見えないものが見えてくることもあるのです。
読者の皆さんもちょっと追ってみてください。手牌の逆再生ですね。

<なんとなくでも考えてみよう>


手牌にあったのはこんな感じで、親なのにドラの1mを第1打に切るような形なんですよ。
赤の無い協会ルールでそれは珍しいことです。
まあ三色は678ベースでぼんやりとでもありそうですね。
自分に3sがアンコなので、それは持っていないと仮定してもまあいいでしょう。

そして途中で「北8s北」の順番で手から切られています。
当然タンヤオへの変化ですが、北を続けて切らず、8sを挟む格好になっています。
これも読みのポイントになっていそうですね。

さてさて、下石くんはこのリーチを受けてどう打ったか。

「僕はこのリーチ、ドラ1m切りのときは234か678三色があって、
 2s切りのときは678三色本線で、
 北切りのときはタンヤオ移行、
 8s切りのときはソーズのメンツ完成で余ったところ、
 8m切りのときは手広いタンヤオの形、
 というイメージでした。
 具体的には、たとえば

こういう形で1m切りから、マンズが厚くなったりして打2s。

 可能性としてはこういう手牌になっての8m6m切りとか。

 なので、ソーズはまず通って、ピンズも危ないのは258pあたりと決めて、
 手牌にアンコスジの6sも1p3pも切って突っ張ったんですよね」

おーおーおー。

ソーズはまず通るって!?

なるほどなぁ。
読みとしてはもちろん強引と言えるかもしれませんが、
ぼんやりとでも手牌の輪郭を捉えているような気がします。

しかしこれすごくないですか?
14枚の配牌から7枚入れ替わって、それがどんな牌でどんな順番かは当然わかりません。
大抵は考えることすら煩雑で面倒なことです。

「でも五十嵐さんの本当の手牌は今も知らないんですよね・・・。横移動したんだったかな。
 だから答えを知ってみたいところではありますね」

いいでしょう。
ここは協会1期生でイガリンとも長い僕がLINEしてみることにします。
教えてイガリン。

<イガリンの回答は?>

──こんなことがあって下石くんがこう読んでたんですけど・・・覚えてますか?

五十嵐毅

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