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プロ雀士超技巧伝・堀慎吾③浅井のロン牌ビタ止め(文・須田良規)

こんにちは、日本プロ堀慎吾研究会の須田良規です。

麻雀というやつは人の手牌を読むことがそこまで重要なゲームではありません。

大切なのは、手組みや押し引きを間違えないこと、読むにしてもある程度の危険度や打点を意識すること、それくらいで十分結果に結びつくでしょう。
実際僕も含めて、多くのシーンではそこまで緻密に相手の手牌を見透かそうとはしないと思います。

それは、脳のリソースを手牌読みに駆使することが時間的にも労力的にも見合うことの方が少ないからですね。

しかし堀くんの麻雀を見ていると、「ほえ~よくそこまで見えてるなぁ~」なんて驚くことが多く、
そういう部分を勉強することも決して無駄ではないですよね。

結果に直結しやすいわけでもなく、誰でも明日から簡単に実践できる、という話でもないのですが、
読んでいる人の思考プロセスを覗いてみることは、一つ麻雀の視野を広げることにもなりますし、何より知識欲を刺激してくれますよね。

そんなわけで今回は第22期雀王決定戦12回戦のオーラスの場面を見てみたいと思います。

はじまりはじまり~。

まず北家堀くんがカン3sチーして北バックに発進です。
堀くんの点棒は雀の涙ですがこんなに読める人でも点棒がなくなるのが麻雀ですね。そこは置いておきましょう。

さて堀くんはトータルポイントが214.5pの2位で、1位が今3着のじゃがばやし。220.9pと近いです。
トータル3位4位とは結構離れているので、堀くんは仲林が3着のまま終わって欲しいわけですね。
仲林はハネツモで大まくりのトップなので、それだけは避けなければいけません。
1着がトータル4位の矢島亨なので、堀くんはこのままの並びで終わらせたいのです。

堀くんがドラの7p切り。

それを東家のマッスル浅井くんがチー。

1p切りでタンヤオドラドラ。5800ならトップ目に立てます。
前巡から1pが河に並んで、傍目にもクイタン一直線に見えますね。

次巡筋肉はソーズのリャンカンを埋めて打3s。
6m片アガリのテンパイです。
5mを引けば567三色になって親マンになりますね。

次巡にツモ8m。
うーん三色変化は消えますが、8mと3pのシャンポン待ちの方が片アガリよりいいですよね。
3秒ばかり考えて、浅井くんは打7mとしました。

同巡、トップ目やじーにもテンパイが入ります。

ドラの7p切りで36p待ち。

浅井くんは5mを持ってきましたが、もう三色はなりません。ツモ切り。

矢島がさらに浅井くんに通っていない2sをツモ切って、堀くんの手番。

3mを引いて少し考えています。
これは下家浅井くんの現物なので、浅井くんに怖いわけではありません。

今は、上家矢島のテンパイが明らかなので、何か差せないかなぁ~と思っているんですね。

しかし矢島の待ち候補はちょっと絞れませんし、現状は自身もイーシャンテンなので、
ここで手牌を崩して自分のアガリをなくしてしまうのも微妙ですよね。

何より当たりの3pは浅井にシャンポンでアタマハネになってしまいます。

そしてすでにこの頃から堀くんは、それを意識していました。
浅井くんに、シャンポンで3pが当たると。

そうなんだ。
理由は後述します。商売上手でしょう。でも絶対損はさせません。なんなら定期購読もおすすめですよ。

そして浅井くんから出た北をポン。
南切りで25pテンパイですね。

やれやれだぜ。

2pは3枚、5pが1枚とごろごろ残っています。流石にアガリでしょう。
8mと3pのシャンポンなんかに負けてたまるもんですか。
実際は8mがなくて、3p1枚しか山にありません。

次巡の5sはツモ切り。
河を見ると2s8sを矢島仲林で通してますしね。

浅井くんは今引いた5sを空切りしました。
通った牌のリセットでよくありますよね。

ところがこれが、浅井くんにとっては手痛いキズ、堀くんにとっては大きな手牌読みのキーになってしまいました。

そして問題の瞬間です。
オーノー。
なんてこったい、浅井くんの最後の当たり牌3pを掴んでしまいました。

3pも4pも通っていません。
こういうときは皆さんどうしますか。

やはり待ちの強さで3pをツモ切って、シャンポンに刺さって、
ツイてねーよ、こっちも3p2枚あんだよ、なんて嘆くこともあるんじゃないでしょうか。
僕はあります。しょっちゅうです。

堀くんが浅井くんの方を見て考えます。

やれやれだぜ──、とつまんだのは4pでした。

うおおお。解説実況もうなります。
まじですか。47p待ちとかないの?

矢島が5pをツモ切り。おせーよ!

堀くんの手にも2p。おせーよ!

しかし浅井くんに2pシャンポン待ちはまだあり得ますよ。

でも堀ぽよツモ切り。

そーなん?3pは止めて2pは切るんだ。わからんですねえ。

そしてこのまま流局です。
浅井矢島堀の3人テンパイ。
「なんじゃその3p止め・・・」
とみんなが思っていたかはわかりませんが、
仲林は一人ノーテンになり、ハネツモトップも消えてしまいました。

今回のお話はこの局面です。
なんで3pだけ止めたのか、堀くんから見えていた景色はどうだったのか、その解説になります。

まず麻雀の読みというのは、通常は自身の予想から入ります。
こういう場合はこういうことが多いと踏んで、その答え合わせを巡目を追うにつれて固めて、読みの輪郭をくっきりさせていくわけです。

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