自信を持って言えるが、今まで最強位となった人の誰より、おれがいちばん「最強位」のお世話になっている。【文・長村大】
2週間ほど前、選手紹介のインタビュー動画を撮るために、金本さんが吉祥寺の地下酒場まで来た。少し久しぶりに会う氏は、ご存じの通りアフロ──あれをアフロと呼ぶのなら──になっていた。
おれは「なんかBTTFのドクみたいだな」と思ったが、たまたま店に来ていた某麻雀プロは「サイモン&ガーファンクルのでかいほうじゃん」と言い、「サイモン&ガーファンクルのでかいほうってどんなんだっけか」と思って調べてみたら、ほとんど本人だった。ドクには全然似ていなかった。
いずれにしろおれは酒をかっ食らい、インタビューもつつがなく終わり、なんとなくダラダラと喋っていたのである。
その他愛のない会話の中で、氏が言った。
「そういえば黒木さんが『長村はツイてるんだよなあ』って言ってましたよ」
はるか昔に、同じようなことを直接黒木さんに言われたような気がする。そしてそれは、当の本人がいちばん自覚していることでもある。
プロになりたて、ハタチを少し過ぎたばかりのまだ何者でもない若者──もちろん今でも何者でもないのだけれど──が、オーディションで選ばれてモンドの麻雀番組(NewWaveCup)に出られることになった。ほどなく最強位を取り、メディアや書き物仕事をもらえるようになった。当時は若手が少なかった、という状況もツイていた。
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