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口はわざわいの元~来賀さんとの思いで【文・藤原隆弘】

この話も高田馬場勤務時代の頃の事。

ある金曜日の夜だった。
いつものように来賀さんと同卓していると夕方になって連盟のIプロ
が来店し

「一回だけですけど」
と言って入ってきた。
Iプロは有名私大を卒業し大手音楽企業に勤めるエリート(お父様が業界の重職でそのコネだとは思うが)。
麻雀プロには稀有なセレブなお坊ちゃまである。
卓に着くと下げてきた旅行バックを足元に置く。
どうやら土日の休みを利用して旅行する計画のようだ。
羨ましい、まてよ奴の奥さんは子供を連れて実家に帰っていると聞いていたが(この時既に離婚調停中の別居だったのかもしれない)。
本人がニヤけた顔で言うには最近お気に入りのキャバ嬢とようやくお泊まりデートに漕ぎ着けたらしい。
さらに羨ましい。
そんな時にわざわざ時間ギリギリなのに麻雀打ちに来なくてもよさそう
なものだが、Iプロは女も好きだけど麻雀打つのも大好きなのである。
慌ただしく麻雀が始まりIプロが起家、彼は天運が太くて良く手が入るタイプ。
私は彼と対戦するときはそれを踏まえて最初から彼と真っ向手がぶつかる
ようなメクリ勝負はしない。
ガッチリ抑え込んでミスを誘い、運気を消耗させてから勝負に出るようにしていた。
その日も彼の天運は太かった。
開局7巡目に先制の親リーチ(ドラ⑨)
一ニ三五六七七七②③④5赤6
同巡西家の来賀さんもテンパイ。
ニ三四五六②②②⑨⑨788
ここにドラの⑨が暗刻になり、当然の切り追っかけリーチが一発で親マンに捕まった。
一本場でも親のIプロが6巡目にリーチ。
一発は避けたものの、安全牌に窮した来賀さんが場に1枚切れの西の対子落としで七対子に放銃、ウラウラでまた親マン。
なんと開始五分ほどで残り700点になってしまった(フリーなので25.000点持ちトビ終了)。
ここでIプロの携帯にキャバ嬢から電話が入った。
どうやら早めに待ち合わせ場所に着いたみたいだ。
「もう着いたの?

コッチはあと五分くらいで終わるから少しだけ待っててね」

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