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「大三元の3つ目を、切ってもいいですか?」【須田良規】

こんにちは。日本プロ麻雀協会の須田良規といいます。
昭和50年生まれの48歳です。

どうして年齢を先に述べたかといいますと、
これから言いたいことはおそらく僕と同世代、もしくはもっと年配の諸先輩方にとって大切だからです。

そしてこの記事の中で一番重要だと思いますので、この記事の無料部分でお伝えしたいわけです。
僕と同じおじさん達、どうぞ読んでみてくださいね。

有料部分はこの話にもっと興味のある方、やっててよかった定期購読の方に読んでいただければと思います。

さてさて。
僕は大学3年生のときに雀荘メンバーを始め、この歳までほぼずっと雀荘で働いています。
麻雀プロ歴も23年目ですので、おそらく雀荘事情やプロ業界事情についてはまあまあ詳しいと思っていただいて大丈夫かと思います。

2024年4月8日(月)のMリーグセミファイナル初日、第1試合の南2局にこんな出来事がありました。

現状トップ目は南家の日向藍子選手29000点持ち。
ここで25000点持ちの3着目、北家の鈴木優選手が中ポン、発ポン、カン4sチーと3フーロ。
19900点持ちのラス目、東家の内川幸太郎選手が白を持ってきました。

優さんは三元牌を2つ鳴いてさらにもう1フーロの4頭立て、
内川さんが白を切って放銃すれば、小三元か最悪大三元になりますね。

この白、どうしたらいいと思いますか?

この件について僕は、こんなポストをしています。

これはどういう意図だったかと言うと、

内川さんは結局ツモった瞬間の白を留め、
このように何度かテンパイ形になっても切ることはしませんでした。

このときXやABEMAのコメント上でも、
「切れや」
「いや切れないよ」

と賛否両論の様子だったかと思います。

僕がこのとき思ったのは、
たとえ選手がここで三元牌の3つ目を切るべきと判断して、切って、
それがもしも最悪の放銃になったとしても、
周りが結果論や感情論で全否定することがないといいのになぁということです。

誰かの強い反発や批判が、選手の懸命な選択や冷静な判断に影響を与えることは、ゼロではないのです。

このポストには予想通りこんな返信がありました。

「アホな振込とかそれとか麻雀にも礼儀あるでしょ。
 好き勝手やりたいなら1人でやってください。他3人に失礼」

「役満だけは特別。勝者を決めるような暴牌は控えましょう。
 内川プロはオリても勝ち筋があるのでオリを支持します。
 周りのプレーヤーの迷惑にならないような打牌を心がけるようお願いします」

「期待値とか確率とか関係ない。白は打ってはいけない。白を打つのは、自分さえ良ければ良いという考え方で、
 同卓者のみならず、自チームおよび他チームひいては麻雀界に迷惑がかかる事がわかっていない」

こうした意見をしてくださる方、まずお礼を言わせてください。
わざわざお手を煩わせて、普段絡みもない僕にリプをしてくださってありがとうございます。

他の方からはこれは妙に思われるかもしれませんが、ちょっと聞いてくださいね。

みなさんは、僕と同じおじさんですね。間違いないです。
そして昔から麻雀を打っていて、そういう他人に迷惑をかけるとされる打牌について、
注意されたり、自分もしないように気をつけたり、麻雀においてそんな気遣いを心がけて来た方々です。

三元牌の3つ目を切るのは、ゲームを壊す言語道断の差し込み行為、自分勝手な打牌だと固く禁じられてきた世代なのです。

僕も雀荘で長く働いていますから、
昔は三元牌を2つ鳴いている人がいる状況でリーチをかけたら、白をトイツ以上で持っていることは絶対、あるいは白単騎、
というようなことは、お客さんもメンバーもわりと共通認識だったかと思います。

東1局にお客さんに序盤に2つ三元牌を鳴かれたところで、他のお客さんが3つ目をえい、と先に切ったら、
鳴いていたお客さんが
「こんな麻雀はやりたくない!許せない!」
と言って東1で帰ってしまったこともあります。

もっと昔は、誰に鳴かれても役のつく三元牌を切るときは、1枚目から「失礼──」と言うのがマナーだったとか。大変ですね。

僕にこうした返信をくださった方々は、ご年配で、麻雀を昔からやってきた経験があるのでしょう。
そして、麻雀の内容にも礼儀があり、誰かの迷惑になるような打牌はやってはいけないという信念があるのだと思います。
そう言われてきたんですよね。

みなさんは、僕や他の人たちにもそう教えてあげたいわけですね。

でも、大丈夫です。
同じおじさんである僕と一緒に変わりましょう。

所作はともかく、麻雀の内容にマナーなど考えなくていいのです。
というか、ないのです。どこにも。

相手が失礼と思うならマナー違反かもしれないですが、
そもそもその失礼と思う感情、合っているんでしょうか?

片山まさゆき先生の漫画にこんな有名なセリフがあります。

牌賊!オカルティ

「どんな打牌も誰かに対しては有利であり、誰かに対しては不利なんだ
麻雀に迷惑じゃない一打なんてないんだよ」

確かに大三元の3つ目というのは役満の起こり得るとても明白な打牌ですよね。
すごく目立つんですよ。

でもじゃあ三倍満だったら迷惑じゃないんですかね?
倍満だったら?

そしてそれをアガったのがもし自分だったら、打った人は迷惑で失礼な行為をしたと思いますか。
迷惑かどうかは、立場にもよります。というか大体人の鳴きもアガリも迷惑です(笑)。しゃあない!

麻雀は、合理的で整合性のあるゲームでは全然ありません。
いろんな国で行われて、いろんな歴史があって変遷した、良い意味でいい加減な文化的ゲームです。
中国では放銃した人以外も点棒を払います。いちいち文句なんて言ってられませんね。
三家包といいます。サンチャパオ。

日本は一家包です。イーチャパオ。
放銃した人が責任を取ります。これも日本人らしいのかも。

おそらくみなさんは、礼儀と思いやりを持ったとても日本人らしい考えの打ち方をされてきた先人たちです。

でも、その礼儀が現代にそぐわないものに変わって来たのなら、
みなさんの持っている思いやりの精神を新しい世代にも向けてあげられたら、と思いませんか。

どんな打牌もどうやったって誰かに有利不利があります。
それに対して自分の価値観で選り好みをせず、
相手の打牌を評価するならば正当に、期待値と確率に沿った基準で行うことを頑張ってみませんか。

業界の諸先輩方、
僕だって若い世代に老害とか古いとか言われたくないですよ。
一緒に理解ある年寄りになりましょうよ。

僕が一番お伝えしたいのはこのことになります。
どなたかの気持ちに届けば幸いです。どうか。

さて、ところで内川さんは白を切るべきだったんでしょうか。
ちょっと考察をしてみましょうか。
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数理的なデータになると確か中発と鳴いている人が白をトイツで持っている可能性は、

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