【無料記事】なぜフリー雀荘を廃業したか【文・吉田光太】
2023年1月、フリー雀荘の廃業を決めた。
池袋駅のローターリー内という都内でも有数の好立地。
幸いオープニングから多くのお客様に恵まれ、週末ともなれば行列が出来るほどだった。
12年間で1万人ものお客様が会員登録して下さいました。
そんな店を閉店させた理由をお話しします。
1、雀荘のコーラ、一杯いくら?
あのディスペンサーから出てくるコーラ。
皆さん、一杯いくらだと思いますか?
10円? 20円?
そう、“一昔前”はそれ位でした(仕入れや契約にもよりますが)。
今は一杯40円します。
仮に2杯提供し、オシボリをお出しすると1時間で100円かかります。
×5時間で、1日50人来店すると25000円...
もちろんゲーム代を頂いた上でのサービスですのでどんどん飲んで下さい。
ただ、全残しされると裏で泣いています。
さて、“一昔前”。
そうですね、15年前の2008年と物価を比較してみましょう。
2008年というとGReeeeNの「キセキ」や、嵐の「One Love」。
あとは仲林圭pが似ている小島よしおさんの「関係ねぇ」などがヒットした年です。
ついこの前の様に思えますね...
私は歳を取らない不死鳥・吉田なので感覚が鈍っていますが、年月の経過の早さには驚かせられます。
皆さんは何をしていた頃でしょうか?
身近な外食店で見てみると
例)都内 麻布の家系ラーメン店
ラーメン 600円
ライス 100円
CoCo壱番屋
牛もつカレー 550円
ツナサラダ 280円
マクドナルド
ダブルチーズバーガー 290円
ビックマック 310円
ちょっと外食すると1000円を超える現在と比べるとかなり安く感じます。
また、東京都の最低賃金は
2008年 766円
2023年 1072円
と実に30%ものアップ。
ここに水道光熱費、交通費、消費税の上昇を加えると全体で25%ほどアップしているように感じます。
2、雀荘経営の難しさ
さて、話を雀荘に戻すと15年前はフリー1卓1ゲーム 1600円(1人 400円)が相場でした。
現在は1ゲーム 1800円(1人 450円)が主流ですね。
12%ほどの値上がりなので、25%の物価上昇には追い付いていません。
涼しい店内でフリードリンクを飲みながら女の子と1時間弱打って450円、と聞くとかなりお手頃にも思います。
店側はメンバーを常に3人揃えるので<最低賃金+経験者や役職手当、女の子の手当て+交通費×3人>で人件費が1時間に4200円はかかります。
つまり、2卓は立っていないと赤字です。
ここに1日当たりの家賃・光熱費が2~3万円
先述のドリンクやイベント費。
さらに、通信費、広告費、物件の更新料、自動卓のリースや入れ替え、エアコンや設備にかかる費用がかかってきます。
卓割れしている時や、閑散期の6月などは経営者のメンタルはぶれぶれです。
麻雀もきっと弱っているはず。
ただ、これでも“一昔前”はやっていけました。
フリー人口が爆発的に多かったからです。
ウチの店の損益分岐点が多めに見て400万円ほど(15時間営業)。
客単価が平均で2500円なので、平日に10万円。週末はセットも入れて15万円売上が必要です。
しかし、ここ数年はネット麻雀や娯楽の多様化により若いお客様が減りました。
大手チェーン店・禁煙店・ノーレート雀荘の台頭も目を瞠るものがあります。
加えてコロナによるシニア世代・社用族セットの雀荘離れ。
全体で2~3割は麻雀店の顧客が減っているように思えます。
池袋も20店舗は閉店しました。
新しく出来る店は3人麻雀やスピードバトルばかりですね。
山手線内で麻雀プロが経営する店だと新宿fairy、渋谷かめきたざわ、御徒町FUN、神田ナインあたりでしょうか?
どこも入場料を取ったり、ゲーム代高めの営業を始めたりと工夫をしています。
実は相談に乗ってもらったり、情報交換したり、スタッフを共有しあったりなど、たくさん助けてもらっています。
どこも良い店なので、応援しています!
さて、ここで謝罪です。
ここまで麻雀店の現状を書いたのですが、実は業態変更の理由は経営不振ではありません!!
ビックリですよね。
ただ書きたかったので...ごめんなさいい。
確かに売り上げは落ちていましたが、経費を切り詰めたり、私がゲストに行って外貨を稼げば何とかなります。
幸い私はMリーガーでもないのに毎年全国からいくつもゲストに呼んで頂いています。Barのゲストに入っても盛況です。
そして、先日の初note「移籍の真相」(多数の購読ありがとうございます)にも書きましたが、「Mリーグ入り内定説」もハズレです。
もちろんそれぞれ要素の一つではあります。
ただ、最大の理由ではありません。
3、じゃあ一体なんなんだよ??
経営者的な側面を見せてしまった。
いつもの奇人・吉田に戻ろう。
皆さんは「ガイア理論」をご存じでしょうか?
→*生物は地球と相互に関係し合い、「巨大な生命体」と見なす仮説です。
空気や水、ヒトも動物や微生物もこの地球が存在するための「役割」を担っているというものです。
これは麻雀界にも当てはまります。
麻雀星人とまでなった偉大な男が居れば、男性プロの人気を牽引してきたタキヒサだって居る。
スポンサードしてくれる企業さま、ファンの方々、いち雀荘のメンバーだって「役割」を担っている。
では、吉田に与えられた「役割」とは…?
美しい麻雀を打つこと、麻雀教室をすること、blog小説を書くこと、Twitterで愛を呟くこと…
そして、「後輩プロが安心して働ける環境を作る事」です。
私は18歳で雀荘のメンバー稼業を始めました。
そこで数多くの家族のような仲間と出会えた。
仕事中もその後も休みの日もずっとツルんで遊ぶ。
卓上では真剣勝負をし、同じ釜の飯を食い、寝食を共にしていた。
裕福ではなかったけれど楽しい日々だった。
でもこの家族は長続きしないことを知った。雀荘だからだ。
私は今の池袋キングダムを始める前に、六本木で雀荘を経営していました。
そこで初めて出来た部下が可愛くて仕方なかった。
こんな奇人を兄のように慕ってくれ、プロ協会に入り、立派な活躍を見せてくれている(勝手に移籍してゴメン)。
仲林圭、橘哲也、浅井堂岐、小川裕之、黒井修太、久保雄紀、協会を去った元A1リーガー2人。
そして既に協会に在籍していた堀慎吾、綱川隆晃、大坪顕二…
ただ、雀荘の労働環境は決して良いとは言えません。
個人経営の小さな店だ、してやれる事は限られてる。
だから、私は「彼らが平等で安全に麻雀を打てること」だけを考えて店づくりをしました。
引っ掛けリーチをしようが、アガラスをしたって良い。
上司や怖い客、負けている同僚に麻雀で気を遣うな。
忖度が必要な場面もあるかもしれない。
だがトラブル対応や、集客は俺の仕事だ。お前らは麻雀と接客を考えろと。
麻雀だけをキレイに真剣に打てと!
それがツモの輝きに繋がるから...。きっと伝わっているハズ。
そう伝えて、そんな店にすることが私の「役割」であり、「幸せ」だと気づいたんだんだ。
だけど、この家族も長続きはしませんでした。
リーマンショックといった不運や私の能力不足により閉店し、弟たちと離散することなった。
そして池袋キングダムを立ち上げ、経営コンサルタントをつけて勉強し新たな夢を実現することが出来た。
私は仕事と麻雀にメチャクチャ厳しいです。
可愛い女流プロを揃えているのに、「私語禁止」という頭のオカシイ店でした。
利益は大事だけれど、娘たちが麻雀に集中できる環境を作りたかったからです。
当然、口うるさい私はスタッフと衝突することもありました。
時間の管理、発声の大きさ、盆面(負けている際の態度)もネチネチ注意します(そこは優しく言えば良かった…)。
それでも先日、閉店に伴い移籍した女流プロが
「今になって、光太さんの理念が分かりました。厳しけれど、正しかった」と言ってくれました。
泣きました。在籍時だったら時給500円アップです。
そして、「でも、仕事中はホントに嫌いでしたけど」と言ってくれました。
その夜は、色んな意味で枕を濡らしました。すまない…
4、新たな夢
新橋に「麻雀初心者の殿堂」と呼ばれる店があります。
先日、名古屋にも進出した「ベルバード」です。
私はベルバードのオフ会にゲストで呼んで頂いて衝撃を受けました。
「こんなにゲストもファンも楽しめる機会があるのか。俺もやってみたい、と」
陽キャを気取っているけれど、本当は人一倍繊細で幼かった仲林もファンを大事にしている。
人気者のはずの松本吉弘pの気遣いも素晴らしい!
近江(琵琶湖の辺りを指すそうです)の商人の間には「三方良し」という理念があります。
これは、「買い手も、売り手も、お客も幸せであるべき」という考え方なんです。
現世のナポレオンだと勝手に崇めている革命家・藤田晋さんのお力で麻雀ファンは激増しました。
そのファンも、ゲストも、店も幸せになる事業を俺もしたいと思うようになった。
ベルバードの経営者である鳥越真仁p、鳥越智恵子pご夫婦は私のそんな思い、現状のキングダムに対する悩みを親身に聞いてくれアドバイスを下さいました。
無償で、時間と足を使って、ライバル店となるかもしれない相手にだ…
自分の店だけでなく、業界全体が良くなれば業界も活性化すると。
二人もまたガイアの系譜なのだ。
私はお二人をガイア先生と胸の中で呼んでいる(本当にごめんなさい)。
そう、私は今後も増える麻雀ファンが楽しめる店を作るために業態変更したんだ。
プロ連盟への移籍、人気店をいったん閉めての方向変換。
半年間、それはもう信じられないぐらい悩んだし不安だった。
でも、叶わない夢は無い。
たとえ叶わなくても夢にチャレンジすることが夢なんだ。
そしていつだって両親や師匠、仲間が力を貸してくれた。
個室セット雀荘に生まれ変わった新生キングダム
一生麻雀業界で輝きを追うので今後とも応援宜しくお願いします!一生麻雀業界で輝きを追うので今後とも応援宜しくお願いします!
fin.
この記事はここで終わりです。吉田プロを応援するという方は以下で購入を押していただくと吉田プロの応援につながります。
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