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耐える人・HIRO柴田【文・荒正義】

HIRO柴田は、神奈川県川崎市出身の48歳で、連盟の17期である。
念願のA1は16年前。この年、初の決定戦進出というから元々雀力はあったのである。
趣味はYouTube鑑賞。ゲーム、ポーカー。結婚してからは、料理と旅行も増えたという。これは、いいことだ。

麻雀を知ったのは、9歳の時の小学4年だという。これはかなり早い。
これまで獲った、タイトル。

○第39期『鳳凰』。
○13期『グランプリ』
○第1期『達人戦』

タイトルは少ないが、『鳳凰』が一つでも入っていれば立派である。連盟員は、現在830人を超える。
その誰もが、一番の名誉の『鳳凰』を目指しているのだ。
30年やってもA1に進めるのはわずかだ。さらに、そこで優勝すことは困難を極める。確率は1パーセントにも満たないはずだ。
彼が『鳳凰』になったとき、私は彼に云った。

「これからが勝負だ。がんばれよ!」

「いや、もう充分です。夢は果たしました…ありがとうございます!」

こう云って、彼が優しい目をしてニコリと笑ったのである。
私がヒロ柴田と話したのは、これが初めてである。放送対局の控室でも、話したことがなかった。
麻雀のプロは、久しぶりに会っても対局前はしゃべらない。挨拶をする程度だ。
なぜかーー。
話をすることで、入れた気合が抜けることを嫌うからである。
気合が抜けると、注意力が散漫になりミスが出る。危険察知能力も落ちるだろう。
だから、放送対局の前の会話は無し。愛想がない、と思われても仕方がない。
麻雀プロは、卓上がすべて。勝って華を咲かせ、そして次の勝負にチャレンジする。
この思いは、誰でも同じである。

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