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強すぎる、鈴木大介 その勝利システムの根幹はどこにあるのか 文・須田良規

<優勝はまたも鈴木大介>

10月16日(日)に行われた最強戦「男子プロ王者の帰還」
これを69700点という圧倒的な持ち点で優勝したのが、将棋のプロ棋士である鈴木大介だった。

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鈴木はこれで4年連続のファイナル進出。
2019年の最強位でもあり、今回の他7人も歴戦のプロ雀士たちが相手。正に圧巻という他はない。

予選A卓もトップで圧勝、この決勝は2位以下に影も踏ませぬダントツぶりだ。

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左利きで、このリーチ後にぐぐっとツモ牌を力強く引き寄せる姿が、本当に恐ろしい。

気合いや執念がツモ牌を変えるわけではない。
それが、そんな浅薄な常識を覆すように、鈴木はツモってくる。
見る者に、そう思わせてしまう剛健なキャラクターが、鈴木の特長だと思う。

それにしたって、鈴木はいつもリーチをかけて強引にツモり上げる印象がある。
もちろんそれが痛快であるし、説明不要の圧倒的な強さといえばそういうものかもしれない。

しかし、それだけで本当に、麻雀は勝てるのか。

勢いに任せたリーチとツモが、鈴木の麻雀の本質なのか。

棋士である鈴木が、どのようにこの決勝を戦ったのか、
その目立たなかった部分も含めて追って、強さの理由を解き明かしたい。


<東3局 手牌の価値>

東3局、7巡目に西家の醍醐大の手が、少し止まった瞬間があった。

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醍醐は卓上を見て、少考する。そして、ややうなずく様子を見せた

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しばしの後、打【7s】
【西】アンコのカン【2s】待ち。
2600のダマテンである。

自身は28800点持ちの2着目、トップ目は30300点持ちの鈴木である。

テンパイは一番手であろうが、そこまでカン【2s】が良い自信はなく、捨て牌に工夫があるわけでもない。
東家の土田浩翔の河にもソーズが1枚もなく、ここはかわしの一手を選んだわけである。

そしてこれを受けたすぐ下家の鈴木。

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その当たり牌の【2s】を持ってくる。

全体牌図はこうである。

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手なりで最速手を打つなら打【4p】だろう。
現状微差ではあるがトップ目、【4s】が内に伸びれば【1m】を落としてタンヤオに向かえばいい。

鈴木がここで選んだのは、

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【1m】であった。

ここでのシャンテン戻し。
鈴木は誰よりも早くリーチをかけて相手を降ろしてツモる、というただ直線的なスタンスではないことがわかる。


<鈴木の語ったシャンテン戻しの理由>

鈴木の談によればこうだ。


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