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日本一強い銀行マンと来賀さんとの思いで【文・藤原隆弘】

高田馬場にある某フリー雀荘の専属プロとして勤務していた頃の話。

そこにはよく来賀さんも来てくれていた。

その日も午後1時に出勤し店のメンバーと交代して卓に着いた。
対面には初顔の客、眼鏡をかけたサラリーマン風のオッチャンで年齢や体格は私と同じくらい、眼鏡の奥の眼光は鋭く卓上への目配りや牌捌きからかなり打ち慣れた実力者だと感じられる。
こういう相手には最初にこちらの力を見せつけておかないと舐められてしまうので、いつも以上にギアを上げた。
私が起親で西家のオッチャンが
8巡目リーチ。捨牌は
北⑦⑤中③6五一(リーチ)
私の次のツモは⑨で手牌はこう
ニ三④⑤⑥135567北北⑨
普段ならこんな⑨はツモ切るのだが
警戒レベルを最大にしていた私はの対子落としで迂回した。
次巡上家のお客さんが⑨を切ると

「ロン!イチマンニセン」
一ニ三七八九⑦⑧789西西
ドヤ顔で手牌を開く。
入り目はドラのなんだろう。
(あぶねー警戒レベル上げてなかったら俺が打ってたし、テンパイしていたら
止まらなかったな😅)

途中でオッチャンは携帯を取り出して電話をかける。
「○○だけど、卓立ってる?
じゃあ後で行くからヨロシク」

そしてこっちが聞きもしないのに

「今のは私が常連にしている[G]っていう店なんですけどね、この店は
日本で1番レベルの高いフリー雀荘だと思います」

[G]は当時新宿にあった最高位戦Aリーガーだった先輩のKプロが店長を務めるお店。スタッフにも若手プロが数名いて、確かにレベルは高い方だと思うが、オッチャンは日本中の全てのフリー雀荘のレベルを知ってから言ってるんかい?
と心の中で呟いた。
私は意地でトップを捲ったがオッチャンは意に介さず
「次ラス半でお願いします」
と曰う。
帰るんかい。

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