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命運を分ける一牌の選択───麻雀最強戦2024「伝説を継ぐ者」24/03/31 阿久津翔太

皆さんこんにちは!!!

日本プロ麻雀連盟の阿久津翔太です!!!

前回の記事はこちら↓

そろそろ初めてのA2リーグが始まるそわそわタイムな季節ですが、前回と同じように先日行われた麻雀最強戦2024 ・伝説を継ぐ者で面白かった選択について書いていきたいなと思います!

まだ観てない方はぜひABEMAプレミアムから見返したりキンマwebの観戦記を読んだりしていただければと思います!

それでは早速予選A卓から見ていきたいと思います。

【異彩を放つ土田浩翔プロ】

予選A卓は前原雄大プロ、沢崎誠プロ、佐々木寿人プロ、土田浩翔プロの4名。

まず何より最初から最後まで異彩を放っていたのが土田プロの手順。

東1局の第一打でここから5mを切るという選択。

一番左にもっといらない牌がありますよと伝えたくなるような牌姿ですが、土田プロはこの日一貫して第一打に字牌を切らず、なんなら半分近くの局において中張牌から切っていきました。

まるでこの手がどうなるか見せてあげますよと言わんばかり。

僕たちのような世代は土田プロの名局のいくつかをYouTubeで見て育った世代ではありますが、実際に対局を見ると、なんだこれはと最初に思い、途中から気がつけば次はどんな手になるのかと興味津々になってしまうような惹き込まれる感覚になるのが不思議な麻雀です。

ちなみに土田プロはこの日太陽のエネルギーを浴びてから来たとのことですが、僕は太陽の光を浴びるとくしゃみが出ちゃうので真逆なのかもしれません笑

そんな東1局は土田プロが先制リーチを打つことに成功し、前原プロの追っかけリーチの宣言牌を捉えて5200のアガリに。

【魔王・佐々木寿人プロのバランス】

続いて東2局、注目すべきは佐々木プロの打ち回しです。

567の三色も見えつつ、ドラ受けもあり、白の対子は攻守に使えそうな手牌に見えますので生牌の東を切るかと思いましたが、佐々木プロは5s切りの選択。

最大の理由は親の沢崎プロの捨て牌でしょう。

第一打中から手なりで進めているように思えたところから中張牌の中でも特に真ん中の牌が複数余っていて、かなり手牌が整っているのではないか、いつリーチが飛んできてもおかしくない、そんな思考が間違いなくあるでしょう。

さらに6pが場に2枚切れとなったことで567の三色も厳しく、危険な5sを先に処理しておいて、手牌の中に親の安全牌が複数ある状態を保ちつつ、安全にアガリが拾えそうなら狙う、そんな手牌進行を選びました。

1枚目の白をスルーした後に役無しカン6pのテンパイを入れますが、ここで親の沢崎プロからリーチが入り、無筋の69mは勝負せずに安全な57pを落としていきます。

結果的に67sを後から引いてきたため、5s切りは裏目という形とはなりましたが、見えていた未来であるこの親リーチに対して安全な対処がしやすい手牌といった点でこの手牌進行は状況にかなりマッチしているように見えたシーンです。

その後、2枚目の白をポンして69mテンパイを取り、

2人テンパイでの流局となりました。

佐々木プロと言えば真っ直ぐな攻めというイメージの方も多いですが、ここ数年は攻める進行と守備力の高い進行の使い分けとバランスが見事で、この局のように危険性が高い局にほぼノーリスクで加点するといった丁寧な局が増えているように感じます。

少し飛んで東2局2本場供託3

土田プロが5mをポンして打4sとします。

4sですよ4s。4mじゃなくて。

そもそもこの手は鳴かずにメンゼンで勝負手になりますし、形も十分なので鳴くこと自体が意外でしたし、ポンってことは供託も多いし1回アガリにいく判断なのかなと思ったら打4sですよ。こりゃあたまげました。

このポンから最終的にはトイトイにし、アガリとはならずとも1人テンパイで流局となりました。

この手からトイトイにするぐらいならばメンゼンでリーチを目指した方が高打点でアガリやすいというのが大体の人の発想ですし、自分もこの手からは鳴かなそうですが、ここからトイトイに仕上げる発想力はまさに土田浩翔と言わざるを得ないでしょう。

A卓はそんな土田プロと沢崎プロが逃げ切る展開になるかというところでしたが、オーラスに佐々木プロが跳満条件をクリアして、沢崎プロと佐々木プロが勝ち上がりとなりました。

続いて予選B卓忍田幸夫プロ、伊藤優孝プロ、滝沢和典プロ、荒正義プロの4名。

【優先すべきものを見極める滝沢和典プロ】

まず選択が難しい1局だったのは東3局2本場供託1の親番滝沢プロの手牌。

9pを切るか白を切るかというところですが、5pや8pを引いた時に9pがあることの嬉しさと、白が重なって仕掛けが効くようになる嬉しさの比較がメインでしょう。

僕はその嬉しさにあまり差を感じませんが、大体切る白ならばいわゆる相手が重ねる前に切りたい理論で白を先に切りたいというのが勝り、打白としそうだなというところです。

滝沢プロの選択は打9p。

こんな綺麗に裏目引くことある? というぐらいの5p8p引きでしたが、こうなった場合でもフリテン3メンチャンはリカバリーが効きやすいというのが9pを切っても良い理由のように感じます。

さて、ここから何を切るかですが受け入れ枚数の差がそこそこあるのと、456や567の三色にスライドする可能性にも期待して打1mというのが僕の考えですが、滝沢プロの選択は打7m。

この局は選択が分かれるなぁと思いましたが、この選択の最たる理由は対局者にありそうです。

まず打7mというのは最終形のツモりやすさというメリットを意識していて、なぜツモりやすさを意識したかというと、相手3人の受けの強さを評価したからだと考えられます。

実際に前局、前々局と滝沢プロがリーチや仕掛けて先制するも受けられてアガれないどころか1人テンパイもさせてくれないといった局が続いていました。

出アガリできる愚形なんかよりも少しテンパイが遅れたって、フリテン3メンチャンの方が強いんだという、ここまでの展開を見ての判断がこの選択に映し出されたと言っていいでしょう。

ここでも456の三色は見ずに打5m。

14mの場況がやや良いと見て打7p。

ツモりやすい待ちを最終形にするという強い狙いが込められた手順で1300は1500allのアガリとなりました。

続いて東3局3本場

伊藤プロがこの手牌から打5s。

ドラを使い切ろうという伊藤プロらしい一打。

2mをポンしてテンパイを取ってからドラを重ねて狙い通りの進行に。

しかし、ここはヤミテンを入れていた滝沢プロが2900は3800のアガリ。

何気なくスルーしがちなところですがこのヤミテンの選択はなかなか面白いです。

平和ドラ1は一発裏ドラありのルールにおいて最もリーチしたい打点オブザイヤー受賞と言っても過言ではないぐらい、ヤミテンだと安いけどリーチしたらそこそこ満貫になる典型的なやつです。

しかも、まだ他3者と10000点差ぐらいということで、ここをリーチしてアガって1人抜けておきたいところでもあります。

ということで3枚切れとは言えリーチにいきたいところでしたが、

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