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吉田光太へ【文・長村大 】

 ラインを開くと、「ギリギリ残留おめでと!」の文字。村上淳──元赤坂ドリブンズの──からである。
 彼とは十代からの付き合いだから、もう30年ほどが経つことになるが、リーグ戦や大きな対局の前後には、必ず応援の連絡をくれる、他団体にも関わらず。マメで優しい男なのだ。
 ありがとう、の返信をすると、またすぐに返信。
「ウチらには時間がないからね!」
 おれは苦笑する。最近、こういう言葉が来るようになったからだ。明るいトーンでしんどいことをサラっと言うのは、昔からでもある。事実だけれど。
 そしておれは──過ぎていった30年のことを少し考えてみたりする。

 前期リーグ戦の最終節、村上くんほどではないにせよ、ここにも古い付き合いの人間がいた。
 吉田光太。
 今年、最高位戦からプロ連盟に移籍してきた選手である。実績もあり、最近では、Mリーガー・仲林圭の師匠筋的な人物として注目されている。
 だが、移籍一年目は苦戦を強いられ、最終節を迎えた段階でかなり苦しい降級ポジションにいた。かくいうおれも、その少し上、というだけであったが。
 吉田と麻雀を打つのは──十数年ぶりになるだろう。かつてはよく打ち合ったものだし、酒も飲んだ。だがその後おれは麻雀界を去り、またそれとは別にいろいろあって──いろいろある、場合はたいがいおれが悪いのだが──疎遠になっていた時期も長かった。
 近年は、酒席などで会えば普通に昔話に花を咲かせるくらいの関係には戻っている。
 最終節、そこそこの勝ちを納めなければ吉田は降級となる。だが必死なのはみな同じだ、吉田はあえなく降級となり、おれは冒頭のやりとりの通り、命からがら残留となった。
 麻雀だ、勝ち負けには時の運もある。だが気になったのは、吉田の覇気のなさだった。

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