天使の笑顔の元気なあの子。
私は新卒で小学生の指導員の仕事を始めた。
大学卒業したての二十歳そこそこ。
社会人一年目。大人からもあるけれど、洗礼は子どもたちからも受けることがある。
「せんせい!もう〜しっかりしてよ〜」
いつも私に突っ込んでくる元気な小二の女の子がいた。
その子は明るく、声が大きく、誰よりも元気。
愛嬌があって、笑うと目が細くなって、とっても可愛い女の子。
本当にあなたは小学生なの?っていうくらい、大人びていた。
私の誕生日には手紙をくれた。
「22さいのオババさんですね」って書いてあった。
「いつもげんきでいてね」とも書いてあった。
なんだか嬉しかった。
私の幼馴染が結婚すると言ったら、手紙を書くといい、一生懸命書いてくれた。
私のことを慕ってくれてるから、私の幼馴染にもこんなふうにしてくれるんだろうなって、勝手に思って…なんだか嬉しかった。
本当に元気いっぱいの子で、特定の子を贔屓することはこういう仕事では御法度なのだが、会えるのが嬉しかった。
また、当時私はオレンジ色が好きだった。
小さい子がよく言う「すきないろなに?」っていう質問には、ぜんぶ「オレンジ色」って答えていた。
指導員の仕事も様になってきて、数年が経った。
元気なあの子も部活を始めて、もうすぐ卒業。
活発な子は部活動でも活躍するだろう。
なかなか会わなくなった。
そんなある日、卒業アルバムを持って彼女が私の元へやって来た。
「先生、これ書いて!」
って。
持って来てくれた卒業アルバムと一本のペン。
オレンジ色だった。
私が好きな色、覚えててくれたんだろうな。
そういう優しい子だから、毎日会えるのが嬉しかったんだよ。
当時の私は相当にやにやしていただろう。
子どもたちの成長は一日見ただけではわからない。
寄り添って、ずっと一緒に居て、初めてわかることがたくさんある。
だからあの時、本望だなって思いながら、幸せだなって思いながら、メッセージを書いたのを覚えている。
そんなあの子ももう二十歳を超えただろう。
新卒の頃の私と同じくらいかな。
春になるといつも思い出す。
元気かな。
今も、これから先も、ずっと元気なあの子のままでいてほしい。
#はたらいて笑顔になれた瞬間
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