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意思に反する異性介助についての通知が出されました!

障害者本人の意思に反する異性介助がなされないようにするための通知が出されました。(通知文は下方※1へ)
意思に反する異性介助がなされないよう、まず障害者の意向を把握することと、その意向を踏まえた介助・介護体制の確保に努めるべきという通知です。
これは、厚労省から障害福祉の事業者あてで出されたもので、 対象は、療養介護、障害者入所施設、ショートステイ、生活介護、居宅介護など、介助・介護がなされる制度全般と言えると思います。 (次のサービスは除外されます。計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援、自立生活援助、就労定着支援)
つまり、筋ジス病棟や重症心身障害児者病棟で行われている療養介護、病院からの外出に利用できる重度訪問介護なども対象です。 筋ジスプロジェクトでは、プロジェクト女性ネットを中心に、この望まない異性介助問題について、約4年に渡って各方面へ訴えてきました。
きっかけは、プロジェクト発足年の2019年に始めた、筋ジス病棟の実態調査でした。 障害者の特に女性が男性職員にトイレや入浴の介助をされてつらいという話は、筋ジス病棟入院患者や施設入所者から多く出ていて、昔からずっと続いている問題です(※2)。
プロジェクトで行った実態調査でも、「異性介助が苦痛だ」「同性介助の希望を言えない」「希望してもきいてもらえない」といった声が、入院患者さんや元入院患者さんから複数あがったのです。
そこで、今なお望まない異性介助が当たり前のように行われてしまっているこの現状を何とか改善しようと、厚労省と意見交換会の場を持ちました。(2022年に二度、2023年に一度の合計三度。)
意見交換会は、プロジェクト女性ネットメンバーを中心に行い、要望書を他団体(※3)と連名で作成し、アンケートを取って集約した経験者の声とともに提出しました。
また、この問題について様々な議員に訴えたり、国連障害者権利条約の権利委員にロビーイングして日本政府への勧告を要望(2022年8月@ジュネーブ国連)したりもしました。 NHKバリバラ、ハートネットTVをはじめ、新聞各社、雑誌等、複数メディアでとり上げていただき、雑誌と報告書に寄稿もさせていただきました。
こうした様々な働きかけによって、望まない異性介助問題への理解が、行政・社会において少しずつ深まり、広がっていったように思います。そこには、性暴力被害軽視を変革していくMeeToo運動等の高まりに後押しされた部分もあったのかもしれません。
それらの結果、今回の厚労省から通知が出されたのではないかと考えています。
ですが、望まない異性介助問題を含む障害者の性的な面の尊厳について、一般的にまだまだ二の次のように捉えられていると私たちは実感しています。 また、意思に反した異性介助を繰り返すことは虐待(※4)ですが、その他の各種虐待、制限、抑圧の常態化も見聞きしています。
それら含めすべての改善を目指して、今後もあきらめずに取り組んでいきたいと思います。
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(※1) P49 ② 同条第3号については、本人の意思に反する異性介助がなされないよう、サービス提供責任者等がサービス提供に関する本人の意向を把握するとともに、本人の意向を踏まえたサービス提供体制の確保に努めるべきものであること。なお、把握した本人の意向については、サービス提供記録や面談記録等に記録するとともに、本人の意向を踏まえたサービス提供体制の確保について、人員体制の見直し等を含め必要な検討を行った結果、人員体制の確保等の観点から十分に対応することが難しい場合には、その旨を利用者に対して丁寧に説明を行い、理解を得るよう努めること。 https://www.mhlw.go.jp/content/001238914.pdf 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」より抜粋
(※2) 約50年前には、府中療育センター闘争にて三井絹子さんが声をあげられています。https://note.com/poplar_bungei/n/n3fd66385fb42  厚労省での意見交換会を一緒に行った DPI女性障害者ネットワーク https://dwnj.chobi.net/ は長年この問題に取り組んできており、2012年と2023年の報告書で、望まない異性介助をされた当事者の声が報告されています。(2023年報告書には、筋ジスプロジェクト女性ネットも執筆参加しました。 https://dwnj.chobi.net/?p=1279 ) 望まない異性介助は、筋ジス病棟だけでなく、一般病院でも現在も起こっています。他と比べると割合は少なめですが、デイサービスやショートステイ、居宅介護でもある話です。
(※3)DPI女性障害者ネットワーク、認定NPO 法人 DPI 日本会議、全国自立生活センター協議会女性リーダー プロジェクト、全国自立生活センター協議会JIL (※4)厚労省による障害者虐待の防止と対応の手引きにおいて、意思に反した異性介助を繰り返すことが心理的虐待として例示されています。

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