真夜中の訪問者

それが
そっと扉をひらくと、
幽かな月明かりに似たものが、ゆらり
白く浮かびあがる。

冷めた溜め息に促され、冷えた指先が行く先を求め宙を泳ぐと、
 
 

不機嫌な時間がうごきだす。

それはきょうも、きのうもおなじ味がする。
工場の床の匂い。

夜毎に訪ね来るものの手にはプラスチック粥。
 
 
 
これほどに囚人病棟の気分を味わう。
日日、吐き癖のある患者は、こうしてパブロフと化し薬を与えられる。

明日も、あさっても、よだれなきパブロフは恙無い。