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さかな~道ならぬ鯉

舟つ列車の座席からは、金魚を脱いだ少女としじまの眠りが聴こえる。車内アナウンスからは終着駅が告げられていた。



少女が目を覚まし、さかなのある筈を確かめるも、それは空筈の鰭のみ落ちる。再びアナウンスの夕立から逃れるよう少女は、さかなのいた帳としじまを手早に鞄へしまうと、


紅玉の靴を脱いだ代わりに、その鞄からすこし前の古びた靴を手にした。




そうして列車を降り改札の向こう祖母が待つのを認め、少女は駆けゆく。後ろは振り返らない、いまは。  


夜更けの帳に、蒼の月の浮かぶ頃。



ねえ、おばあちゃん
そのあと、さかなは何処へいったの?


さあね、
そう言った老婆の口のなかではさかなが跳ねていた。




道はつづく。無きにしも非ず。

……………

端的に終わらせる。いつ続くかしれぬものかたり。

紅の目と蒼の目を持つ彼は、多くをわたしに与え死に至った。いつか、また逢いたいと願う。