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さかな~道ならぬ鯉
夢のはじまりは夜だったか、朝だったか。
追随したのはどちらか、
起点はどちらか。
夕暮れの赤だったなら
夜の黒、朝の白とは対極になく。
さて、はじまりは夜だったか、朝だったか。
さかなは、そのようなことを誰にいうでもなく心に話す。少女を映す窓はまだ夜だった。
徐に座席から腰をあげると、
窓の映す少女と目が合った。仄か赤い眠たげな目は心做し不安を訴えているようにもみえる。
すこしだけ待っていて貰えますか。
さかなの問いかけに少女は、草を食む小動物のように小さく頷く。その様は何処かおかしみすら感じるものがあった。そしてさかなは、不用意に沸き上がるものを堪えるかのよう座席をあとにした。
通路の行く手には幾つもの帳が下りている。
赤いもの、白いもの、黒いもの取り取りに帳の奥を物語っているのだろう。それは試金石のようにあらゆるものを拭ってきた取り取りだった。
さかなは列車の後方へと足を進めていた。
長い長い列車の長い長い通路に尾鰭はつづく。
最後尾の車窓には遠く線路の点滅灯のゆらぎ。
少女は夢の入口を行ったり来たりしていた。帳が静かに上がると、そこには黒い珈琲と白いクリームの施されたケーキを手にさかなが立っている。夢か現か、それを目にした少女の眠たげな瞼は、夢から覚めたミルクのみ人形のように一瞬にしてぱっと見開いた。然うして
識閾の茶会としましょう。と、
さかなが少女にケーキの皿を手渡すと、少女のくちもとに赤い花の綻ぶをみた。つづく