しじま~道ならぬ鯉(幽寂閑雅)
雲ひとつ無い、蒼の水紋から生まれた。そうして
ただ直向きに底を目指した。
わたしは、どこにも在る。宇宙に底のあるよう、こころ無きものが存在しないよう、それは見えないに過ぎない。
彼らがわたしを訪ねたのは、惰弱からではないはずだ。
脱いでしまうことは誰しもが容易ではない。それでも訪ねたのなら、それは底をみるためだろう。
彼らは最初、ふたつの円だった。交われば共有点が生まれ、そこから座標を探る。それは必ず在るからだ。見えないは、見ないことも見ることも出きると殆どが知る。
わたしは、いつだってちいさくありたい。そう誰かが望むなら、それはむつかしいことなどではない。
蚊帳のなかだって、魚の浮袋のなかだって悪くはないはずだ。
どこにいたとて道はつづく。