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さかな~道ならぬ鯉

さて、話しはどこへ跳んだのか。そう言って
さかなは、冷めたものを手に夜をみた。
 
 
 
覗く窓には白妙の横顔映る。それは、少女というには少し優艶なる。開きはじめ花の頃のようだった。

柳髪の垂れるや見え隠れる項に暁月夜照る。
 
 
そのくちもとには、最早白になく紅のしじまが似合うだろう。足元の赤い靴は、矢庭に階段を昇り始めていた。今し方までの少女が面影を粧う。その様に

さかなは、つづく軌条の先へと駆られた。流れる星が連れ去るよう散り散りとした狼狽に縺れそうになると、娘の白く指が現れ、さかなの紅玉をひと撫でする。それは面映ゆくも、

かがり糸に耽溺するが如く、狼狽諸とも池へと落ちてゆく。池のふちには、立ち枯れた湯気の残滓がのぼり、
 
 
 
落ちた池の底に底はなく、かりそめにあった。つづく