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さかな~道ならぬ鯉

窓に映る世界でさかなは溜め息をついていた。
窓の外、地平線には沈みかけの赤い背鰭がゆらぐ。

車内では車掌と入れ替わりにやってきた売り子が、乗客ひとりひとりに声を掛けながらナニやらを売っている。さかなは売り子より先に声を掛けた。
 
 
ナニがあるんだい。
売り子はさかなに一瞥をくれると商品の入ったワゴンからひとつ取りだし手渡した。

此方、ナニにございます。

渡されたそれは文庫本ほどの薄く小さな白い箱。
ひっくりかえして能くと見てもそれは白い箱だった。
ナニとも書かれてはいない。
 
 
繁々と箱を見つめていると売り子が言った。
如何なさいますか。

さかなは、おもむろにそのナニを窓へと映してみた。そして、

嗚呼とぽつり。
 
 
 
何枚かの硬貨を売り子に渡すと、売り子はお辞儀をしてまたワゴンを進めた。つづく