悩めるDTMerを救う「脳内物質」大全
あなたは、ピアノの前に座るだけで毎回すばらしい楽曲を書けているだろうか?
作曲に携わっている方なら誰しも、インスピレーションが次々と湧いてきて制作が面白いほどはかどるとき、どれだけがんばってもまったく何も生み出すことが出来ず悔しい思いをするとき、という両極端の状況を経験したことがあるのではないだろうか。毎日コンスタントに作曲をすれば、ある程度均一に曲を生み出すことは不可能ではないが、その中でもやはりアップダウンはあるだろうし、気分の浮き沈みは免れないだろう。
僕らの調子の善し悪しを決めているのは、脳内で分泌されている脳内物質だ。その中でも特に作業や制作に影響するものは、ドーパミンを筆頭に7種類ある。本記事では樺沢紫苑様による『脳を最適化すれば能力は2倍になる』を参考にしながらそれらの物質を紹介すると共に、脳内物質に関して個人的に良いと思うTO DOをご紹介したい。
ドーパミン
ドーパミンはやる気やモチベーションを高める脳内物質で、「幸福物質」とも呼ばれる。制作に直結するため、DTM的には最重要物質の一つに数えて良いだろう。ドーパミンによってやる気やモチベーションが高まる仕組みは「報酬サイクル」と呼ばれ、目標を設定して目標達成をするという繰り返し中でドーパミンが分泌されるようになっている。つまり、「いかに上手な目標を設定できるか」がカギとなるのだ。さらに実行したことを振り返って数値的に評価できると、分泌がさらに促進される。
ただし、ドーパミンはマンネリを嫌う性質があり、脳が「新鮮さ」を感じないと分泌されにくい。仮に目標を上手く設定したとしても、いつも同じ目標をいつもおなじワークフローで作業をしていると分泌される量が減ってしまうのだ。そのため、同じ目標でもできる限りいつもと違う方法、アプローチをとることで、同じゴールに向かうのでもドーパミンが分泌されやすくなる。
これらを踏まえ、ドーパミンを分泌させるためにできることをまとめてみた。
要は、毎日同じようにピアノの前に座ったりギターを構えて曲を作ろうとするのはテンションが下がるので、脳的にはあまり良いよ、ということ。
なおTO DOの項目の「適切なフィードバック(定量化)」と「変化を追加」はなかなかすぐに思いつかないと思うが、見えない活動を見える化するという点で定量化は重要。なんとかして数字で振り返られるようにしておこう。経験的に、それだけの見返りはあると思う。
ノルアドレナリン
ノルアドレナリンは別名「闘争と逃走のホルモン」といわれ、危険や不安など緊急性のある場面で分泌される脳内物質。やりたくないけどやらなくてはいけないことをするときなどにはノルアドレナリンが分泌されて対応することになる。
必須アミノ酸の「フェニルアラニン」を原料として体内生成されるが、生成量は無限ではなく、使いすぎると枯渇する。そのため、毎日の作業においてはオンとオフをしっかり切り分け、ノルアドレナリンを使う場面を限定するのが有効だろう。つまりがんばりすぎる人=ノルアドレナリンの使いすぎ、というわけだ。ガス欠の車を運転し続けるとエンジンを痛め、車へのダメージが残るという。燃料もなく傷ついた車でいったいどれだけ遠くにいけるのか?
ちなみに、ドーパミンとノルアドレナリンの関係は、GAIN(報酬)とPAIN(痛み)の関係といえる。ドーパミンは快を求めるGAINで、ノルアドレナリンは不快を避けるPAIN。まさにアメとムチである。願わくばこの2つを使い分けて、目標に長期的かつ持続的に取り組めるようになりたいものだ。
アドレナリン
アドレナリンはノルアドレナリンと同じく、「闘争と逃走のホルモン」の一種。ノルアドレナリンが主に脳・神経系に作用するのに対し、アドレナリンは臓器や筋肉など身体に作用するという違いがあるそうだ。身体機能の向上という機能がある一方、集中力や判断力など脳の機能を向上させる効果もある。
ノルアドレナリンとアドレナリン、そしてコルチゾールは合わせて「ストレスホルモン」と呼ばれ、身体から毎日分泌されている。特にアドレナリンとコルチゾールは昼間は高く夜は低いという特徴があるが、一日を通してストレスのかかる状態になっていると夜も高い状態が続き免疫力が低下する。つまり、病気にかかりやすくなってしまうのだ。そのため、アドレナリンに関しては夜間にいかにオフにできるかが鍵となる。
「オフの時間」のベストな時間帯は入眠前の2〜3時間だ。一流の人ほど「オフの時間」の使い方がうまいというので、この時間には休息を意識してみるとよいだろう。
セロトニン
セロトニンは「脳というオーケストラの指揮者」とも称され、すべての脳内物質の中でも最も重要なホルモンの一つ。午前中にのみ活性化するのが特徴で、「すっきり」「さわやか」な気分をもたらしてくれる元気を生み出すホルモンだ。セロトニンが低下すると憂鬱な気分になり、極度に低下すると「うつ病」になってしまう。
セロトニンを活性化する方法は以下の3つ。午前中、特に朝に活性化するホルモンなので、毎朝これらの活動をしておきたい。逆に、夜に実行してもあまり効果はないのでご注意を。
朝の散歩は①日光浴と②リズミカルな運動を両方カバーできる最強の行動だ。
朝ごはんも食べれれば鬼に金棒だが、筆者は食べない派なので、食べている方はその習慣をキープするとよいのではないかと思う。
メラトニン
メラトニンは睡眠の質を左右し、人体の「回復」を司る脳内物質。セロトニンを原料としており、朝のセロトニンが夜のメラトニンになるので両者は双生児のようなものだと考えて良い。
睡眠の質を高める方法は以下6項目だ。100点にする必要はないと思うが、できれば4つ以上はクリアしておきたいところ(80点狙い)。個人的なTO DOと合わせてご紹介する。
つまりは睡眠の前と後の話なので、起床後はセロトニンを意識した生活をし、就寝前はメラトニンを意識した生活をしようということ。
なお「早起き」するのに「早寝」をしなければと思う人は多いと思うが、「早寝」は「早起き」にほとんど影響しないとのこと。体内時計は朝起きることでリセットされるので、「早起き」するために必要なのは「早起き」が正解である。
アセチルコリン
作曲をはじめクリエイティブな作業をするうえで特に重要なのが、「ひらめき」を生む脳内ホルモンであるアセチルコリン。アセチルコリンは午前中や昼間より、夜に分泌されやすいそうだ。個人的にも作曲は朝よりも夜のほうがはかどる気がするので、これはとても合点がいくところである。
しかし、ここで大きな矛盾が生じてしまったことに皆さんはお気づきだろうか?超重要物質のセロトニンを分泌させるためには早起きがよく、睡眠を促すメラトニンは入眠前の脳の興奮を抑えるべきである一方、同じく作曲家にとって最も重要なアセチルコリンの分泌は夜がいいときた。
セロトニン・メラトニン連合 vs. アセチルコリン、である。
さて、この問題をどう解消すべきだろうか?夜ふかしして早起きする、は睡眠時間が減って本末転倒になってしまう。残念ながら最適解はなく、折衷案を考えるしかないようだ。大正製薬の研究によると、「成長ホルモンはメラトニンによっても分泌が促されるので、メラトニンの分泌量が多くなる深夜1〜3時に深い眠りに入っている状態をつく」るので、「日付が変わる0時までには就寝し、7時間程度眠るのが理想的」だそうだ。ということで「0時就寝〜7時起床」を基準とし、「1時就寝〜8時起床」くらいまでをひとつの目安にしたい。
ちなみに、アセチルコリンの分泌に良いと言われているのは、「好奇心を刺激する、外出、昼寝、座ったまま手足を動かす動作」の4つ。創作する立場からすると、経験的に「好奇心を刺激する」がかなりポイント高いと思うので、自分の好奇心を引き出せるように頑張ってみて欲しい。
エンドルフィン
エンドルフィンは「脳内麻薬」ともいわれ、脳内物質の中でも特出した効能がある。分泌される状況は2つあり、1つは極限状態(非常に苦しい、痛い状況)におかれるたときに真逆の感覚である「多幸感」をもたらし、その苦痛をチャラにしてくれるというもの。もう1つは、癒やしやリラックスを感じる状況下で分泌されるパターンだ。
エンドルフィンの効能は、脳の休息、注意・集中力、記憶力、創造性、免疫力の向上。心と身体をダブルで癒やす、メラトニンと並ぶ究極の癒やし物質といえよう。
手軽に導入できるところでは、ランニング、アロマ、クラシック音楽、チョコレートあたりだろうか。また、感謝の気持ちもよいらしい。とりあえず間食はチョコレートで決まりだ。運動できる人はランニングが特にオススメ。
まとめ
いかがだっただろうか?人が脳内物質にいかに左右されるかわかっていただけたのではないかと思う。個人的に特に重要度の高いTO DOをまとめると、以下のとおりだ。
このうちセラトニンとドーパミンは対策しやすく効果も大きいので、まずはそこから取り入れてみるといいだろう。生活習慣の改善が取り組みのメインになるが、特にドーパミンに関してはよりDTMや作曲に直結する内容になっているので、ぜひ実際にやってみることをオススメしたい。
図式化するとこんな感じだろうか?
最後に、本記事では主に以下を参照させていただいた。非常に有益な内容なので、興味がある方はぜひ併せてチェックしてみて欲しい。
参考図書:樺沢紫苑様『脳を最適化すれば能力は2倍になる』
その他参照動画:
サムの本解説ch様:【まとめ】7つの脳内物質をイッキに復習【脳科学・保存版】ドーパミン・セロトニン他(脳内物質をまとめた動画)
サムの本解説ch様:【20分で解説】ドーパミンが人を操る3つの理由【逆に利用すれば人生イージー】
それでは、良いDTMライフを!
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