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全人類piscineを受けろ

00.introduction

00.ごあいさつ

こんにちは。tichijiと申します。
2023年8月期のpiscineを受験し無事に合格することができたので、密かに憧れていた体験記を書くことにしました。忘れる前にあの素敵な8月を形にして残しておきたいのがひとつ、これから受験を考えている方へのエールがひとつ。

すっきりまとめて書くのがあまり得意ではないので冗長になりますが、よろしければ暫しお付き合いください。

基本的に文字しか出てきませんのでご了承ください。
また、内容に関しては配慮してあるつもりですが問題がある場合はすぐに対応しますのでお知らせください。

01.受験に至るまで

まずは受験の背景から整理します。
僕は現在、小学校の教員として働いています。学校現場では昨今のコロナ禍をきっかけにICT機器の整備が急速に進んでいますが、それを扱う教員の知識や経験の不足が現状として存在します。
また、今後プログラミング教育を推進していく事が決まっていますので、それに耐え得る知識をつけていくことも求められています。

それとは別に、プログラミングそのものに関しても興味がありました。
現代は様々な場面で情報機器やプログラムが活躍していますが、知識のない僕はその機械やサービスがどのような仕組みで動いているのかを理解していません。言わば「出された料理の材料は知らないけど、おいしいから食べている」状態で、それをなんとかしたいという思いが燻っていました。

そんな折に知り合いから共有されたのが「42 Tokyo」というプログラミングスクール、そして「piscine」という42への入学試験でした。

42はフランス発のエンジニア養成機関。バックボーンを問わず広く学ぶ意欲のある人材に必要な教育を、という理念のもと、入学試験である「piscine」を突破した学生に対し無料で学習環境とカリキュラムを提供しています。

最大の特徴は教員や講師が存在せず、学生同士の相互的な教え合いによって進んで行く課題解決型学習であるという点。実際のエンジニアの働き方に近い取り組み方を実践していくプログラムです。

普段学校で授業をしている身としては、この学習形態が気になりました。教え込まれるだけの教育ではなく、学生が自分から課題を見つけ、当事者意識を持って解決に当たりながら学んで行く形式は定着度・学習意欲の保持にとって素晴らしいと考えます。
が、小学校の現場でここまで振り切ったシステムを構築することは難しいので、学生側の立場で体験してみたいという思いもありました。

とまあいろいろ理屈を捏ねはするけれど、1番の受験動機は「4週間続く試験とか凄い楽しそう!」でした。結果として、このマインドセットはプラスに働いたかなと振り返った今は思います。

01.piscineの所感

ここからはざっくりと僕のpiscineを振り返ってみようと思います。試験の詳細についてはルールでお伝えできないこともありますが、知っちゃって受けるのは本当に本当に勿体無いので是非先入観のない状態で挑んでいただきたいと思います。
「記憶を消してもう一度遊びたいゲーム」みたいなフレーズを耳にすることがあると思いますが、それの一位がこれ。

00.事前

受験を決めた後は、どのようにして働きながら試験を受けるかを詰めることが必要でした。教員という立場のアドバンテージは長期の休みをある程度取りやすい夏休みが存在していることと考え、8月期の受験を決めました。
受験を考えていることについて所属長に伝え、許可をいただきつつ必要に応じて業務を調整してもらえたことはとても良かったと思います。黙って受けていたらだいぶ辛かったはず。

その後piscineの日程をひたすらにチェックし続け、8月枠への申請ができました。申請後は割とぼんやり過ごしていたのですが、「流石になんかやっておかないとマズいかもしれない」と思い立ったのが7月でした。ほんとにちょうど1ヶ月前くらい。そこからはTwitter(Twitterです)を使って同じ時期の受験者の方々とコミュニケーションを試みたり、初心者向けのプログラミング教本を何冊か手に取って勉強したりしていました。僕は完全未経験の真っさらな初学者(ちょっとだけAtCoderを触ったことがあったくらい)だったので、文字を画面に表示できたことに感動しながら少しずつ学び、買ってきた教本を半分くらい進めたところでpiscineの初日を迎えることになりました。

01.初日〜1週目

当たり前なのですがとにかく何もわからない。
そういうものと分かって来ていたはずではありますが、予想をしっかり上回って広いプールの中で身動きがとれない感覚を味わうことになりました。

ただラッキーなことに周りにいた受験生の皆さんがとてもコミュニケーションの取りやすい方達だったので、これ幸いとたくさん頼らせて貰いました。わからんことを相談しながら解決していく、peer to peerの学習。この方策をとにかく大切にしているのが42なのだなと感じました。
ここで知り合った人達とは、なんだかんだ最終日まで声を掛け合って過ごせるような存在になれた気がしています。ほんとうにありがとう。

10.〜2週目

週末に仲良くなった人達ともわからんところを共有したり、ちょっと取り留めのない話ができるくらいの余裕を手に入れ始めた2週目。
僕は3週目から段階的に出勤する必要があったため、この2週目までが一つの区切りであり勝負でした。1日平均で12〜13時間はキャンパスにいたと思います。
二日目くらいに知り合った人とこの2週ほどほぼほぼ一緒に行動していましたが、それがすごく支えになりました。ほんとうにありがとう。

11.〜最終週

ここからは、仕事に行きつつ退勤後に42へ、という生活になりました。しっかり働いた日はキャンパスにいられる時間が3時間程度に減ること、翌日のことを考えるとあまり遅くまでは残ることができないこと等、やはり厳しい部分は出てきます。応援してくださり、必要に応じて送り出してくれた職場のみなさんにはとても感謝しています。
なんとか最終日まで泳ぎ切れた時は、心地のいい疲労感と達成感、そしてすでに始まるPiscineロスという感覚でした。

全期間を通してPiscineは本当に楽しかったので、この期間の心残りは成績や合格の可能性がどうこうというより「Piscineを120%楽しみたかった」という部分になります。それくらいこのひと月は楽しかった。もし可能であるならば、完全にフルコミットできる日程を確保して臨むことを強くお勧めしておきます。

10.これから受けたい人たちへ

基本的に、僕の心構えの話です。このあたりを気にしてpiscineを泳いでいましたというやつ。

00.フルコミット

受けると決断した以上、可処分時間は可能な限りpiscineに充てたい。冷徹に全てを切り捨てる必要はありませんが、可能であれば周囲にも事前に伝えて時間の都合が難しくなる期間がある事を理解してもらえると良いと思います。

その後は自分との戦いです。スプラのフェスには参加しました。

01.寝る-健康管理

睡眠はとにかく確保しましょう。無敵になった気分で突き進めるのは(たぶん)長くても2週間が限界です。後々の何かを犠牲に前借りして爆走しても、ツケが回って最終的に完走できなければ後悔のみがきっと残ります。

体を壊すとキャンパスに通えない。自分の将来がどうとかではなく、泳ぎ続ける資格を手放さないために健康でいましょう。

食事も忘れがち。お腹いっぱい食べましょう。僕は昼を面倒がって食べない生活になっていたので反省しています。

10.コミュニケーション

なんか今まで知らなかった世界を持っている人たちがたくさんいます。バックボーンひとつ取っても本当に多様で、その様々な出自の人たちがコードを書くという同じ目的のために集まっていることがわかります。

是非、同じ志を持つ素敵な方々と積極的にコミュニケーションを取り、一緒に高い壁に立ち向かって欲しいと思います。

11.事前の勉強(未経験者)

内容はなんでもいいです。近頃は無料で学習のできるサービスも充実しているので、自分の状況に合ったものを探して取り組むことができると思います。

事前学習は、piscine中で役に立つ知識をつけるというよりもコードに毎日向き合う習慣をつける目的で行うのがよいと思います。書いて動かして楽しい。その繰り返しです。
なので、数多くの初心者向け教本でも語られるように、書籍をただ読むだけでなく自分で手を動かす経験を大切にすべき。

100.取捨選択

今の自分の状況を言語化できるようにしましょう。使用可能なリソース、取れる選択肢、選択肢ごとの重みとリターン。正解か不正解ではなく、自分がその判断をした理由を自分で納得できるようにしましょう。

たぶんこれは42に限ったことではなく、普段から大切なことなのだろうと思います。判断に時間をかけすぎず、かと言って十分な考慮を放棄するわけでもない塩梅を探して行きましょう。

101.楽しむ

でも結局はこれが全てです。期間内の全てを楽しみましょう。

コーディングを学ぶため、就職に役に立てるため、様々な理由を持って受験に臨む方がいると思います。それでもこの期間だけは、人生で一度しか味わえないこの混沌と一種の狂気、そして成長の連続を全身で楽しんでください。

piscine無料なのバグなのでは?

110.やっておくと良いかも

・ターミナルゲーム……42から公開されているゲームです。なんかわくわくしました。

・piscine体験会……zoomを用いて、piscineの空気感を体験することができるイベントです。すごくわくわくしました。

・受験者間の相互交流……みんな不安で仕方ないので、Twitterなどで情報収集をしています。是非飛び込んでコミュニケーションをとってみましょう。話しかけてくださった皆さん、ほんとうにありがとうございました。カンガルー楽しみです。

11.徒然

どのカテゴリにも入らなかった話を訥々と。
ここからはおまけみたいなものです。

00.時間は有限

この一月の取り組みを経て、改めて人生において時間が有限であることを思い知りました。piscine中はそれまでなんとなくぼーっと見てたYouTubeとか1度も起動しなかったし、行き帰りの電車も課題について考える日々になりました。やらなくなったゲームがいくつもあった。
piscineを終えた後も、AtCoderなどを活用して隙間時間にアルゴリズムの勉強をしている自分がいます。

今まで少しずつ分散させていたちょっとした時間たちを全部ひとつのことに注ぐことは、とても貴重で素晴らしい体験に繋がります。piscineはそれを気付かせるだけのパワーを持っている。

ON/OFFとバランスは大事だし、多様な視点を持つことはあらゆる場面で有効です。それを踏まえた上で、時間の有限性と見通しを持った行動と自己情報の言語化・選択肢の考慮に関しての気付きを得ることができる良い機会でした。今後に活きそう。

とは言っても完全にストイックな生活に振り切るのは難しいので、やはり本科入りという感覚の変化は大事そうです。

01.環境がすべて

piscineを泳ぎ切れた理由の一つに、もちろん素晴らしい学習環境がありました。建物、教室、立地。諸々が(少なくとも僕にとっては)とても快適に作られていて毎日通うことに一切の苦がない。

今までもプログラミングを学んでみようという気持ちは心のどこかにあったけれど、それを実行に移すことがなかなかできなかった理由の一つは、学習に適した環境を自分自身に提供できていなかったことにあると現在は思います。学習に限らず、意欲を保って打ち込み続けるためには相応に整備された環境が必要であるということ。

加えて、ピアラーニングも意欲を保つ方策として働いていました。自分1人で考えていたら何もわからないけれど、キャンパスに行けば誰かと課題について話ができる。この安心感はすごい。

成長したい、成し遂げたいことがある。そんな時に必要なのは、最適で過酷な環境に自らを置くこと。雑な逃げ道を封じて、挑戦とワクワクが続く道のりを見つけ出すか用意すること。そんな感覚。
実際、試験修了間際になって頭の端にちらついたのは「この環境を手放すのは惜しい」という思いでした。

学校の現場に即時に全てを取り込むのは難しいけど、ちょっとした課題として取り組んでみることはできるかもしれないなと感じました。環境整備とピアラーニング、ちょうど良く悩んだ結果クリアできるように計算されたカリキュラム。総合的な学習の時間×プログラミング教育、かな……
難しい点があるとしたら、溺れる子が出ないようなケアが必要かもしれないこと。試験ではないからね。

10.試験であり学習

Piscineは入学試験であるけれど、その中で僕を含めたPiscine生たちは必ず成長を余儀なくされました。ここに来るまでの自分よりも先に進んでいないと、突破することができない課題たちが待ち受けていたからです。

Piscineはただの能力を測る試験ではなく、42の与えるスタイルと個人の学び方に関する姿勢の合致度を測る場。志してキャンパスに足を運んだ時点で、すでに42での生活が始まっていると考えて良いのだと思いました。

42の学び方はあくまで一つの方法に過ぎず、それぞれが自分に合ったやり方で自分にとって必要な力をつけて行くことがきっと大切。合格したから必ず通わなければいけないわけでもなく、不合格だったからプログラミングに適性がないということでもない。受験時の能力値を測るものでもない、とても不思議な形態の入学試験だと思います。

101010.conclusion

そんなわけで、この連休明けからは本科生として42 Tokyoに通います。社会人として働きながらどこまでできるかはまだわかりませんが、適度に挑戦できる目標と素敵な環境、そして同じ目的を持って走れる仲間がいる限りは頑張れるんじゃないかなとぼんやり。

タイトルにある「全人類Piscineを受けろ」は流石に主語を盛り過ぎてますが、少なくとも今興味を持ってこのnoteを読んでくださっているあなたは、Piscineを受けることで何か得るものがあるのだろうと思います。少なくとも僕にとってはそうでした。

やりたいこともまた増えてきたので、アカウント作って放置してたこのnoteたまに書いてみるとか、42での学びを記録してみるとか、そんなことも折に触れてできたらいいなという前向きな気持ちです。これからも出来る範囲で出来ることを頑張ってみます。

Born 2 Code.


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