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社長は、黙って書類を受け取ると、チェックを始めた。
社長には、社長の言い分もあっただろう。
何度も何度も同じことを言うようだけれど 不倫には、資格がいる。
「え?何やらかしたんでしょう?」
「そういうつもりじゃなかったんですけど・・・」
私も偉くなったもんだな、と思う。
身に着かないと判っていても、実際身に着いていないと自覚していても、なんとかそこはうまくやり過ごして・・・と思うのが、人の常だ。
社長は、奥座敷で一人で座り、私を待っていた。
「八木さんから、そんな風に頭を下げられちゃうと・・・」 社長の口調が、ちょっと変わったよ…
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。 一体何を言いだすと言うんだ。 「・・・八木さんと伊藤…
「な、なにを仰って・・・」
私の頭の中は沸騰しつつ、冷静でもあった。
私だって、今までの人生の中、口説かれた経験が全くないって訳じゃない。 いや、むしろ学生の…
私からそう言われて、社長の表情が固まった。 ストップモーションみたいだなあと私は思いながら、私はもう一度言った。 「社長にはもう、大事な縁を結んだ方がいらっしゃるじゃありませんか。」