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ぽんず物語 8

ライター きくちしんいち

~前回までのあらずじ~

クマのピートに襲われるところでしたが、ゴン太の父の機転で難を逃れます。いよいよ!このシカの森を越えれば・・・

第八章 シカの森

シカの王、ヘラクレスは大きくて立派なツノを2つ持っています。頭から生えたそのツノはまるで冠のようにヘラクレスの頭上に輝いています。そして、ヘラクレスは他のシカよりも2回りくらい大きく、群の中で目立ちます。彼は左目が見えず、体に大きな傷があります。人間に銃で撃たれた時に左目を失い、自動車にひかれた時に大きな傷を負いました。ただ、身体が大きかったために死ななかったのです。2回とも、なかまを守るために自分が盾となりました。それでも自分が知らないところで何頭も人間によって、なかまが殺されていました。王としてヘラクレスはひどく心を痛めていました。
「この森にはとても大きなシカの王がいる。ここを通るには彼の許しが必要だ。何かおみやげを持っていかなくてはな」
父ギツネはぽんずとゴン太に言いました。
「父さん、おっきいってどれくらいおっきいんだい?」
「そうだなー、こーんくらいだな」
そう言って、自分の身体3個分ぐらい飛び跳ねて、上にもピョーンと跳びました。
「うわー、でっかいなぁ。ぽんず、会ったらどうする?」
ゴン太はぽんずに尋ねました。
「そうだなー、会ってみないとわかんないや」
ぽんずは困り果てて腕組みをしました。
「なーに、シカの王はクマのピートみたいに怖くないよ。ただ、ちょっと気難しいって話だ。無理もない、シカたちは人間に相当ひどい目に合わされているんだ」
また人間か。人間はどうしておいらたち動物をこんなにいじめるのだろうか?ぽんずの人間に対する憎しみは大きくなっていきました。
「人間はどうやら自分たちは世界で一番賢いから何をしても許されるって勘違いしているらしい。同じくらい賢いイルカはそんなひどいことをしないのにな。人間は大昔にとても大きな過ちを犯して今でもそれを引きずってるらしいんだ」
父ギツネは話しながらほんとにあいつら人間は・・・って顔をしました。どうやら人間は世界の成り立ちそのものを変えるような重大な何かを過去にしでかしたようです。そして今もしています。ぽんずの両親を殺し、ゴン吉の足をもぎ取り、ピートの母を殺し、シカたちをひどい目に合わせています。本当にひどい奴らだ、とぽんずは思いました。人間は何を考えてそんなにひどいことをするのでしょうか?一体何が彼らをそのような凶行へと駆り立てるのでしょうか・・・。
「ゆるせない・・・」
ぽんずはぐっと前足の拳を握りました。まだ人間に会ってもいないというのに、どんな生き物かも知らないのに、ぽんずの中に人間はとてつもなく自己中心的で、まさに、自分さえ良ければいいと思っている連中だと悟ったのでした。秋の森はひんやりとした空気をぽんずの鼻先に運んできました。シカの群れが遠くの方に見えました。
「お、シカたちだ。行くぞ」
父ギツネの言葉を皮切りに一行はシカの群れに近づきました。

#児童文学

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