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ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』感想 2024年2月23日(土)18時公演、2024年2月24日(日)13時公演

ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』感想

 
2024年2月23日(土)18時公演(東京・帝国劇場)
2024年2月24日(日)13時公演(東京・帝国劇場)
 
 とにかく上演されて良かったッ…!です。
 大好きな漫画であるジョジョ。漫画を読んでハマり、アニメ化された時にまたまたハマり。(映画化でテンション下がり)岸部露伴のドラマにハマり。次なる展開として帝劇でグランドミュージカル化されると聞いて、大喜びしていました。
 しかし!それがまさかの、準備不足とやらで、開幕初日から数日公演中止になると言う前代未聞の事態。SNSはボーボー炎上するし、情緒が乱されて、それはそれはもう大変でした。開幕するかしないか!?の時には職場で大騒ぎして迷惑かけました。とにかく、開幕出来て良かったです。

 帝国劇場は久しぶりに訪れましたが、普段とは明らかに違う客層でした。休憩時間の男性トイレに列、と言う、いつものミュージカル観劇ではなかなか見れないレアな光景もありました。いやあ、男性トイレにできる列なんて、甲子園球場だけでしか見たことありませんでしたよ!
 少年少女がいる、着物の人がいる、ぬいぐるみを持った人がたくさんいる、赤石を装備した人がいる、等、帝劇がちょっと不思議な空間になってました。しかし、物販列が凄すぎで、人混みに酔いそうでした。あの列はもうちょっと何とか整理した方が良かったと思います。


 

 【★ここからネタバレ全開ですよ★】


 




 さて、そんなミュージカル・ファントムブラッドですが、色々工夫されていて、ジョジョファンとして、ミュージカルファンとして、納得が行く出来の舞台でした。日本初ミュージカル初演として考えると、とても健闘していたと思います。特にキャスト全員、アンサンブルの方も含めて皆が、魂削って頑張っているのを感じました。敬意しかない。
 1幕は特に人間ドラマとして出来が良かったです。
 2幕は色々端折っていて、ドラマとしては残念な部分もありましたが、スーパー歌舞伎みたいなケレン味がある演出は、純粋に楽しめました。ラストの客船炎上沈没と、生首のあれこれが、概念的な演出になっていて、そこはもっとこう、工夫して欲しかったですが…。
 
 音楽も大好きです。ドーブアチアさんのロックな曲が、ジョジョの世界観と良く合ってました。生演奏も良いですね。キャラの動きや展開に応じてジャーン!ドーン!と、楽器が鳴らされる。何て楽しいの。
 中毒性の高い曲が多く、その後の生活で勝手に脳内再生される様になってしまい(しかも、ランダム再生、爆音)、色々と困る事態になりました。
 

【原作と舞台版の変更点】


①  スピードワゴンが過去を回想する形で話が進行。
(メキシコに旅立つ老スピードワゴンが、「これから行く所は危険だから」「自分に何かあった時のために」、自分が見聞きした事を記録に残すと言う形でビデオ録画をしている。)

②  ポコ、ポコの姉ちゃん、ストレイツォ、ダイアー、トンペティ老師は全員出番カット。
(スト様がいない事に、ジョジョファンはもっとざわつくかと思いましたが、皆、特にダメージは受けてなさそうでしたね。「あーん、スト様が死んだ」は所詮、ネタと言う事ですかね。「明日って今さ」はスピードワゴン、「波紋入りのバラは痛かろう」はツェペリの担当となりました。バラ攻撃は、ディオに大ダメージ入ってました。その後くらった袈裟切りよりも、バラの方が痛そうでしたね、ディオ。)

③  色々な必殺技がない。
(技名を叫ぶ人はあんまりいない。)

④  原作と衣装が全然違う。
(ツェペリさんとダリオとか、原作に近い衣装のキャラもいましたが、基本的には概念だけ取り入れて、原作再現はあえて目指さなかったそうです。ドラマ岸部露伴に近い形。これはこれでアリだと思います。ただ、ジョナサンとエリナにはもう一着くらい衣装があっても良かったかと。)

⑤  脱がない。
(昨今のコンプライアンスに配慮してか…。原作ではディオとジョジョが上半身裸になってるシーンが多々ありましたが、誰も脱がなかったです。)

⑥  エリナの人形と、ダニーのブドウが変更。
(これも、コンプライアンスでしょう。)

⑦  波紋部隊。
(全身タイツで変、と思いきや、とってもユニーク。とってもクールな動き。波紋を人間の動きで表すなんて。すごい思い付きですよ!これは人間が演じるミュージカルならでは。)

⑧  ゾンビ部隊。
(仮面と服装と動きでゾンビを表現していてました。分かりやすいし、えげつなくなくて良かった。)

⑨  ねぶた。
(黒騎士2名が巨大化?オーラみたいな…?どうせなら彩色して、毎回爆発炎上してくれたらもっと楽しかったのに。製作費が200倍くらいになりそうですが。)

⑩  お父さんん!
 舞台のダリオは、幽霊化して、原作の100倍はディオを苦しめます。
 デデデデ…と、オペラ座の怪人みたいな独特のリズムが鳴ったら、ダリオ登場の合図。「ディオ、ディオ~、聞こえねえのか、俺の声が…」と不気味な歌を歌いながら、醜い親父がやって来ます。これは素晴らしい。
 ベッドにジョースター卿が寝ていたはずなのに、気付けばダリオに代わっていて、「酒を持ってこいや!」と怒鳴っている演出には「ヒエエ!」となりました。

⑪  ラストシーン
 登場人物全員が見守る中、ジョナサンとディオは一つの存在となって、消えて行きます。
 原作通りのエリナの独白で終わる方が良かった、とも思います。
 しかし、このラストシーンを完全否定することも出来ません。
 ディオ(と、ジョナサン)の最期、ディオの死を完全に描いている、とも思えたからです。
 この「ミュージカル・ファントムブラッド」は、ifの世界で、ディオはボディを奪わず海底で死を受け入れたのかもしれない。又は、3部ラストで、承太郎に倒された後のディオの姿なのかもしれない。もしくは、7部ラスト、ルーシーに首を消滅させられた後のディオなのかもしれない。
 解釈は、あくまでも観客に委ねると言う事なのでしょう。
 実際、私は泣きながら見てました。何故だか、ディオが救われた気がしたのです。
 
 
 

【キャスト別に感想!】

ジョナサン・ジョースター(松下優也/有澤樟太郎)

 イケメンです。
 タイプの違うイケメンをセットで味わえる。お得ですね。歌声もタイプが違います。松下さんはちょっとクセのある不思議な味わい深い歌声。有澤さんは正統派なミュージカル歌声。
 1幕は情けなく、2幕からはグイグイ押して来るのはお二人共通。
 お二人の違いは、ディオへの立ち方にあると感じました。
 
〇松下ジョナサン…人外に堕ちたディオを憐れんで、涙している、聖人系主人公でした。(これは、ディオ目線だとめっちゃ腹立ちますね)
〇有澤ジョナサン…ディオに怒りと誇りで正面からぶつかっている、輝くジャンプ系主人公でした。(これも、ディオ目線だと殺したくなるだけですね)
 
 しかし、今作を見て、ジョナサンはなかなか演じにくく難しいキャラだと感じました。「紳士」と言うキーワードがあるけれども、クセが強い子孫達と比べると際立った個性がないので。舞台上では、序盤は、ディオとお父さん達に押されている感じがしました。終盤に爆発成長するシーンは、主役っぽくて良いんですけど。ソロも案外少ないし。
 ジョナサンはディオと表裏一体の関係性であり、ディオの闇を引き立てる存在ではありますが、タイトルロールで主役には間違いないので、お二人とも、もっと俺が主役!アピールをしても良いんじゃないかと感じました。
 
 あと、一幕のダメな食事シーンを、お二人とも見事に最悪に演じられていたので、二幕ラストには、客船で、完璧マナーでお食事するシーンがやっぱり欲しかったなあ…。ジョナサン成長したよね!となったと思うんです。すごく残念。
 

ディオ・ブランドー(宮野真守)

 こんな大変な役をシングルでやってしまうなんて。宮野さんは超人でしょうか。
 緩急自在の演技力もアピール力も身体能力も、すべて非常にレベルが高く、今作はまるで「ディオの奇妙な冒険」である様に感じました。
 1幕最初の歌はキーが高めに感じましたが、他は楽々歌ってらっしゃいました。ソフトな美声でした。2幕のゾンビワンダーランドみたいなロック曲は楽しいですね。私、ゾンビになってあの場に交じりたいです。ヘドバンしたいですよね。 
 今作は、虐待されて歪んだディオの心の闇をしっかり描いており、ディオに感情移入してしまいます。
 しかし!忘れてはいけません。ディオは犬!犬を殺してますからね。ダニーを燃やしてますからね。犬を殺したクズです。ゲロ以下です。もう、ダニーさえ燃やしてなかったら、全部許してしまうんですが(お父さん達を殺したのはええんかい)、動物を虐殺するサイコパスは許してはいけないんです。
  ところで、あまりにも負担が大き過ぎそうなので、再演するならディオはWキャストにすべきだと思うのですが、誰も宮野さんを超えられないでしょうね。これはまさに伝説。
 (と、言いつつ、Wキャストにするのであれば、松下優也さんかなあ。「王家の紋章」の新妻さんパターンで、と考えたりしています)
 

エリナ・ペンドルトン(清水美依紗)


 とにかく歌声が綺麗で、演技も瑞々しい。エリナさんの気高さとか、強さがよく表されてました。清水さんは今後、たくさんのミュージカルに出演して、色々なお役をされる方なのだと思います。
 ただ、残念なのは、お衣装。客船では肩出し深紅ドレスを着て欲しかった!名セリフの「一緒に死にます」「美しすぎます」も言って欲しかった。最後に棺から凛々しく出て来て欲しかった。見せ場が減ったのは残念でした。
 

スピードワゴン(YOUNG DAIS)

 楽器の一つと思ったらラップも楽しいです。
 かすれた声も、馴染んでない雰囲気も、よく見たら男前なのも、スピードワゴンと言うキャラに相応しいと思います。ミュージカル初出演なのに、2幕冒頭で、毎回アドリブ入れて、お客さんを温めてくれたのも素晴らしい。
 ラップで状況を説明すると言う役割なので、通常ラップよりは、かなりゆっくりはっきり語ってくれてると思います。(って、私が知ってるラップはゴールデンボンバーの「死んだ妻に似ている」と「HEY YO!」だけなので、知識は偏ってますが。)
 でも、歌詞が聞き取りにくいのは事実。特に2幕の「明日って今さ」の辺りは、かなり聴きづらかったです。
 これは、演出次第でもっと異なると思うので。何とかして。
 
 

ウィル・A・ツェペリ(東山義久/廣瀬友祐)

 日程の都合で、東京公演は東山さんしか見れてません。
 サンドウイッチに胡椒かけて食べて欲しかった!
 でも、歌良いし演技良いし。ダンス良いし。声がクリアでとても聞き取りやすいし。波紋のスーハー曲、大好きです。健康に良さそうだし、流行らないかな。スーハー体操…。
 真っ二つになって死なないので、ホッとしました。
 

ジョースター卿(別所哲也)

 さすがのお父さん。貫禄ある演技と歌で、舞台を締めまくってました。
 ジョースター卿には、慈悲をかけない方が良い人もいるんですよ、と、言いたいけど、それもまた運命なんですよね。
 

ダリオ・ブランドー(コング桑田)

 何かもう、見た目も歌声もすべてがダリオで、凄い存在感でした。
 しかし、美人で上品だったらしいディオのお母さん…こいつの何処が良かったんやあ!あれか?太ってハゲる前はちょっと良い男だったのか?悪っぽいところが魅力の危険な男!?お母さん、見る目ないよ!!
 
  
 

【最後に思うこと】


 1幕を軽く手直し、2幕かなりブラッシュアップした上で、再演を希望します。もっと洗練したら、もっと更に楽しめる面白い奇妙なミュージカルになりますよ。
 
 でも、同じくらいの熱意で、2部戦闘潮流の舞台化を希望します!
  ストレイツォがいないから、リサリサをどうするねんと言う話になるけど、まあ、そこは何とかなるでしょう。
 ジョセフは有澤さん、シーザーは廣瀬さんが続投で。柱の男たちは脱いでも凄いミュージカル俳優さんたちで(いますよね、ほら、マッチョを誇るミュージカル俳優さん達…)。
 リサリサ役には、元宝塚系女優さんが非常にハマると思うのです。とりあえず、私の中では、美弥るりかさんと和希そらさんがキャスティングされております。

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