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この世の末を見た…

みなさん、おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡

僕は世の末を見た。
そして僕は車内で一人、震えあがった…。

その日は朝から自家用車を運転し、隣の市まで移動をしていた。朝日を横目に僕は『本日も宜しくお願い致します。僕はツイてる!』とアファメーションを言いながら。

通勤時間帯と重なって、橋の上で渋滞となった。反対車線も渋滞中。
こうなるとやることが無い。朝日を見過ぎた僕は、今度は対向車を見ることにした。kindle作家と名乗っている以上、人間観察は必須。優れた文章を書く第一のコツは、人間観察から始まるのである。

大あくびをしながら運転している若人。今にも寝落ちしそうだ。
ぼーっと一点を見つめている中年女性。早まるでないぞ!
化粧に忙しいギャル。鼻毛まで確認しているではないか。怖ッ。
電気シェーバーで髭を剃る中年男。尖らしている唇が腹立つ。アマタツ。
渋滞中にも関わらずハンドルを握ってイラついているパーマ男。去ね。

車内で何かをしている人の心理が、僕には全く分からない。化粧だって、髭だって、自宅で済ませてきなさい。こんな姿をご両親や家族、異性が見たら失望するのは必至。離婚・破局・失望・減給が待っているという事実に気づかねばなるまい。
一度信用を失ってしまうと、取り返すのに数年はかかるだろう。

朝日を見てリセットした僕は、再び対向車を見た。
斜め前の赤い車を運転している女性。推定60歳前後のおばさんに僕は愕然とした。
なんと、なんと、運転席で、歯磨きをしているではないか………。それも歯ブラシを激しく左右前後に動かしている。

僕の真横に来た時、おばさんがえずいた。歯磨き粉で唇周辺が真っ白になったおばさん。それでも尚、歯ブラシを激しく動かし続けている。
もはや対向車など、おばさんにとっては案山子も同然。羞恥心という言葉さえ、おばさんは忘却の彼方へ捨て去ってしまったのであろう。

にしても、歯磨きはやりすぎではないか?

おばさんとすれ違っても、僕はサイドミラーでおばさんの車を見続ける。
すると運転席の窓から、おばさんがわずかに顔を出した。そして白い液体がアスファルトに落ちた。わずかに自分の車にひっかかったようだ。

僕は今日まで色々な人を見てきた。だけど、まさか運転しながら歯磨きをしているおばさんに遭遇するとは、思いもしなかった。それも運転席の窓を開けて吐き出したのだから、始末に負えない。

僕はこの世の末を見た。確かにこの目で。

僕はもう一度、朝日を見た。
「蒼天よ…どうか今一度、我らに正道とは何かをご教示ください」

「ププッ」
後車の軽トラにクラクションを鳴らされた。
僕はゆっくり発進すると、歯磨きおばさんを脳裏から追いやった。


【了】


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