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我が母校発祥の地《飯高檀林》

過日、仲間が数人集り大衆居酒屋で飲んでいた時のこと。
「そういえば先月、お前の大学発祥の地へ行って来たぞ」
仲間の一人が僕に言いました。
「嗚呼…海沿いの神社だろ?」
僕はグラスに入っているレモンサワーを口に運んだ。
「全然違うし。お前の頓珍漢ぶりに先輩たちがあの世で落胆しているゼ」
仲間が不貞腐れた感じで言ってきた。
「なぬッ。でもお前が言うのなら一応聞いておく。どこにあるんだ?」
「いいだかだんりん」
「はあ?」
「だからあ~飯高檀林だって!」
僕は蛸のお刺身を食べながら、沈思黙考した。

翌日、僕は愛車のプリウスをうんならかして飯高檀林に向かった。
うんならかしても、ちゃんと法定速度は守っていますからね。悪しからず。
広大な駐車場にプリウスを停めると、看板ルートに沿って歩いて行きます。
僕の頭上に山門が現れました。
急峻な階段を登っていきます。
この日は朝から快晴で、無風でした。
「おおっ」
山門の階段を登りきった僕は、思わず声をあげてしまいました。


きれいに掃き清められた土の両脇に、苔が生い茂っています。
天に向かって伸びている巨大な杉の木は、まさに圧巻の一言!
しかも空気が一段とひんやりしているのです。
この荘厳な雰囲気の中を、僕はゆっくりと歩いて行きます。
「これは間違いなくパワースポットでしょ!」
僕は独り言を言うと、その場で大きく深呼吸を繰り返しました。
まるでウォーキング後に深呼吸をしているおじいさんのように………。
僕は杉の木にも触れながら歩いて行きます。

「だけど、まだ我が母校発祥の地と決まった訳ではないからな」
確かに今のところ、何の証拠もありません。
単に掃き清められた道を歩いているだけですから。
僕は小鳥のさえずりに誘われるまま首を右側に向けました。
「嗚呼………」


石碑がありました。
噂をすれば何とかで、すぐに発見しました。
あとで仲間にお礼を言わねば。
我が母校、立正大学発祥の石碑です。
「先輩方、卒業生のTAKAYUKIでございます」
僕は深々とお辞儀をしました。
「卒業してから数十年間、自分は我が母校発祥の地をずっと誕生時だと勘違いしておりました。ここに訂正しお詫び申し上げます」
僕は再び深々とお辞儀をしました。

そして前方に見えてきました。
「これは凄い」

大きな大きな立派な講堂です。
端的に言いますと飯高檀林(飯高寺)は、日蓮宗僧侶の学問所として開設された寺院。
なので本堂ではなく、講堂と言うのであります。
開業が1580年。それから時を重ね一旦廃壇となるも、19世紀に入ってから立正大学に受け継がれたそうです。
まさに荘厳・圧巻・神秘ですよね。
僕は歴史の一部に触れる事で、自分の未熟さを再認識しました。
もっと色々なところに足を運んで学ばねばならぬ!
僕は先ほどの石碑と同様、深々とお辞儀をし、懺悔しました。

急峻な山門の階段を、僕は一段ずつ下りて行きます。
最後に大きく一礼を済ませると、僕は駐車場に向かいました。
ほんの少しですが、身体が軽くなった気がする。
もっと飯田檀林の詳細を書こうと思ったのですが、これはぜひ皆様自身の目で見て欲しいと思い、割愛させて頂きました。
春か秋の紅葉の時期に行かれる事をおすすめ致します。

プリウスの運転席に乗った僕は、エンジンをかけました。
残っていたペットボトルの水を飲みます。
チノパンのポケットからスマートフォンを取り出すと、仲間にLINE電話をかけました。
「オレオレ。今行ってきたわ、飯高檀林」
「そうか。俺の言った通りだったろ?」
「そうだな。ありがとう」
僕はスラッとお礼の言葉を述べることができました。
これも飯高檀林の影響でしょう。
「わりーけど、帰りに落花生買って来てくんね?」
仲間が言いました。
「なぬッ…俺をパシるのか?」
「頼むよ。今夜の焼酎のアテに落花生を食いたいんだよ」
仲間のお願いを、僕は了承した。
「で、落花生の種類はあるの?」
一応聞いてみる。
「あるある。半立ちを買って来て」
「はんだち?」
「そう…半立ち」
「昼間から下ネタを言うな!」
僕はLINE電話を切ると、プリウスを発進させました。

八街市内にある落花生店に到着しました。
「あっ…あった」
仲間の言う通り、本当に落花生の《半立ち》が販売されておりました。
帰宅後、僕も早速食べました。
「うまいじゃん!」
半立ちはとても甘くて、本当に美味しかったです。

またも仲間の事を信頼できなかった僕は、仏門に入る必要があるかも知れません。



【了】

追伸:僕は確かに立正大卒ですが、学部は仏教・宗教ではなく経済ですけどネ!

https://note.com/kind_willet742/n/n279caad02bb7?sub_rt=share_pw



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