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君のためなら何でもする

「きみのほんねは?」

彼女にプロポーズをし、しばらく時間が経過したあと彼女は口を発した。
「なんで、ふざけてるの?」と
少し怒った口調で。
そりゃそうだ。彼女自身は深刻な問題「親の借金返済のためになにか僕にアドバイスを求めていたはずであって、決して僕がさっきしたプロポーズは関係がないことだった。
だが、僕は彼女と結婚すれば僕も彼女のことを助けられる。
そう思っていたのだ。

彼女とベランダで出会ったあの朝、陽菜の涙を流している姿を僕は忘れることができなかった。また、その時から時刻は半日が経過し、ただ今の時刻は午後6時を回っており、薄暗い夜に僕と彼女はスポットライトのような街灯の光を浴びていた。
「僕の話を聞いてほしい。僕は君が好きなんだ」
同じことを僕は二回口ずさんだ。
彼女は「私と結婚なんてしたらしおん君の人生も終わるよ、しおん君は優しいね。君はもてるんだから。私みたいな不細工で貧乏な人じゃなくてもっとロングヘアでお金持ちのきれいな子の方がお似合いだよ」と真剣な目で言われた。
自慢になってしまうが彼女の言う通り僕は多少はもてた。去年のバレンタインチョコは10個ほどもらっていて、返すのが大変だったなという記憶が蘇る。じめっとした夜に吹かれるちょっと幼く見えるツインテールの彼女の髪の毛は綺麗だった。僕が彼女(陽菜)のことを好きになったのは一か月ほど前、つまり最近であった。

僕と彼女は幼い頃から知り合いであったが、そんなに仲良くはなかった。
高校二年になった時初めてクラスが同じになり、席が近いのが理由でよく話すようになった。彼女は優しいうえに明るい性格というキャラを演じながら学校生活を日々送っていた。休み時間は友達とわいわい騒ぐ中、陽菜は学校の授業中ほとんどの時間寝ているような子であった。僕は彼女と席が近かったため授業中のその寝顔を見るのが好きだった。また、彼女にばれないようにその寝顔をいつも見ていたのは内緒である。

少し経つと僕は思った。あの彼女のセリフはつまり「遠回しに振られたな」と。自分でもわかっていた。

すると彼女の口から小さな声でこんなことを言っているのが聞こえた。
「私、小学生の時からしおん君のこと好きだった。でも高校に上がって親が借金をしてるって電話があって父に問い詰めたら本当にしてて…、」と。

「だから高校生でプロポーズってちょっと早いけど面白かったし嬉しかった。でも、私と結婚したらしおん君に迷惑がかかる。しおん君には幸せになってほしい」と。

公園の地面にぽたぽたと触れた彼女の涙はつらい経験をした苦しさ、いや悔しさと感謝のこもっている涙がぽたぽたと陽菜の額から零れ落ちていた。

続けて陽菜はこういったのだ。

そう。だから。

「それどころじゃない」と。

次話(最終話)
ep3.君のためなら何でもする


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