サッカーボールは同時に別の場所に存在するかも? 量子力学の「重ね合わせ」現象について
こんにちは、よっしーです。
今回は自然科学の教養ということで興味深い、量子力学の「重ね合わせ」現象について説明してみたいと思います。
「量子力学」は、電子や原子のような非常にミクロな世界での物質の物理現象の理論をまとめたもので、それまでどんな物理現象も説明できると考えられていたそれまでの物理のことを、量子力学に対して「古典力学」とも言われます。
2重スリット実験
量子の不思議な振る舞いを証明した有名な実験が2重スリット実験です。
これは、量子は観測していない時は波の振る舞いをし、観測した瞬間に粒に戻る、ということを証明した実験です。
「波」というのは高校物理の中でも大きな分野の1つで、また大学へ行っても波動方程式など「波」の概念はたくさん出てきて、どういうものかよく知っているとわかりやすいですが、普通に水面の波をイメージしてもらっても大丈夫だと思います。
下図のように、2つの隙間(スリット)を開けた板に、水の波を当ててみます。
すると2つの隙間を起点としてまた同じ波が発生したかのように波が進みます。
そしてその向こう側に観測面を設けると、2つの波が「干渉」して波が強め合う部分と弱めあう部分が出てきます。
これが「波」の基本的な物理現象である「干渉」です。
強め合った部分と弱めあった部分を色の濃淡で表すと、観測面は縞々模様になります。
これを「干渉縞」と言います。
さてこれを電子という量子で行ってみます。
真空中で粒と思われる電子を2重スリットに向かって発射します。
電子は粒と予想しているので、どちらかのスリットを通るとそのスリットから直線的な位置の観測面に当たると予想されます。
ところがそう単純な結果になりません。
図のように何発も電子を打つと、単純にスリットから直線的な位置に当たるのではなく「干渉縞」のような位置に当たります。
これは、電子が粒とすると左か右のスリットどちらかを通っていくはずですから説明がつかない実験結果です。
私たちの知らない何かが起こって、観測面に縞模様を発生させていることになります。
そこでこう考えるしかないのです。
つまり、電子は発射される瞬間は粒でしたがその後波のように広がり、異なる複数の場所に存在する可能性を持ったまま進むのです。
複数の場所に存在する可能性がある状態が「重ね合わせ」の状態、という新しい概念です。
しかし観測面に当たって観測された瞬間に、1か所に粒として現れます。
電子を何発も打って干渉縞ができるのは、電子が波としてもふるまっていた確固たる証拠です。
このように、2重スリット実験における電子は粒でもあり波でもあると言われます。
観測面のどの場所に電子が現れるかは確率的に決まるため、確実な予測はできません。
そのように量子の振る舞いが確率的にしか予測できないという事実をアインシュタインは受け入れられなかったと言います。
それまでの古典力学では物の振る舞いは物理法則によって完全に1つに定まり、そんな確率的に決まるなんてことは想像しがたいものだったのです。
それにしても、これは私の個人的な感想ですが、観測面に当たるまでの電子の波のような振る舞いをこの目で見てみたいものですが、見ようとして観測すると、粒に戻ってしまうというのですから、お目にはかかれないけど、重ね合わせ現象が起きているのですね。
なぜサッカーボールのような大きな物質では、量子のような波の性質がなく、粒子性だけしか見えないのか。
その有力な理由が、周囲の影響によって波の性質が壊れてしまい、ある1点に存在するという粒の性質だけが残るのだと言われます。
しかし、ということは周囲からの波の性質を乱すような要因を可能な限り排除すれば、サッカーボールでも量子のような重ね合わせが観測(同時に2つの場所に確率的に存在する)できるはずです。
ということで、実際、炭素原子60個でできた「フラーレン」という分子で、なんと重ね合わせ現象が観測されています。
さらに、近年では10兆個程度の原子からなる0.04ミリサイズの金属板が、太鼓の膜のように振動している状態と振動せずに止まっている状態の重ね合わせになることが確かめられました。
ちなみに量子コンピューターは、この、量子が同時に複数の場所に存在する可能性のある状態である「重ね合わせ」の物理現象を用いるそうなのです。
現時点では物質の最小単位の世界での現象を論じているのが量子力学ですので、この世界を本当に支配している理論は量子力学と信じられているようですね。
参考図書:武田俊太郎 著 「量子コンピュータが本当にわかる!」
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