従来の農地法に営農型太陽光の判断指針があるのか、という視点

営農型太陽光(ソーラーシェアリング)の根拠である、農水省通知(制定平成30年5 月15日3 0農振第78号 最終改正令和4年3月31日3農振第2887号)はその本文で、これが「技術的助言」であることを明記している。これは地方自治法第245条に定める技術的助言を意味する。つまり地方自治体の自治事務に関する技術的助言であるので法的効力がないのである。

本来の技術的助言というのは、「助言」という言葉が示す通り、選択の自由を含意するものである。つまり、技術的助言として伝えるが、その通りにしない自由を含意する。

次に、当通知では、表題にて、これが「農地転用許可制度上の取扱い」であることが明記されている。「農地転用許可制度」というのは農地法4条や5条のことを意味するから、当通知は農地法の解釈を示すものであることがわかる。

そうすると、次のことが言えるはずである。

当通知は、農地に太陽光パネルを設置することを許容し、その際の許認可判断基準を示すが、技術的助言であるため、従うかどうかは自由である。自治事務であるので各許可権者が個別に判断してよい。

では、各許可権者(県や市町村)は実務上どのような立場に置かれるか、考えてみる。つまり、農地に、農地性を維持したまま、太陽光パネルを設置する際の許認可指針としてどう考えたらよいか、という視点で考えてみる。

営農型太陽光の通知は、解釈の指針を示すものであるからには、元となる農地法またはその運用指針に「農地に農地のまま(つまり永久転用をせずに)太陽光パネルを設置する指針」が何かしらあるはずである。というのは、そうでなければ、解釈行為が成り立たないためである。

ところが、従来の農地法にはこのような指針が何一つとしてないのである。農地法だけでなく、施行規則や、「農地法の運用について」といった運用指針にも何一つない。

そうすると、当然に帰結として、地方自治体の許可権者は農水省の通知しか判断根拠がないため、通知を独立した法律のように扱うしかなくなってしまうのである。つまり、当通知は技術的助言といいながら、事実上、この通りにするしかない命令同然となっているのである。

この構造に、中央・地方の関係性が後押しし、営農型太陽光の農水省通知が「絶対命令」と化す背景をなしているのである。

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