リチウムより

ただいま羽川

ニルヴァーナが好きだからリチウムみたいに名乗ったけど本当はほとんど知らなくて最近の芸人の永野に傾倒してるからその永野が好きなニルヴァーナのリチウムからとっただけなんだ羽川
数年前にね、一緒に小説とかエッセイとか執筆して遊んでた友達がいてその頃に村上龍のコインロッカーベイビーズを読んだんだよ羽川それまでほとんど本なんて読まなかったのにどハマりするように読んじゃってね、作風全体に漂う多分退廃的な空気感とそれを破壊しようというパワーがあるのが良かったんだと思うよ羽川で、それからその友達が音信不通になっちゃって俺は書くことも読むこともまた出来なくなっちゃってさ羽川羽川にこんなこと言うのも釈迦に説法みたいなもんなんだけど作る楽しみを知ってる人が作れなくなるのってほんとに不能と変わらないんだよ羽川ロンググッドバイって映画にヘミングウェイをモデルとしているであろう不能の作家がいてその作家は酒と借金

に溺れられてるんだけど俺にはそんな余裕もなくて生きるのに精一杯みたいなね羽川羽川の仕事は知らないけど俺は全然別の仕事で食ってたから逃避だって簡単だったんだ羽川何も考えず仕事に打ち込めばそれで良かったからね羽川そんな中でやさぐれた永野の喋りを聞いてるとコインロッカーベイビーズを読んでたときみたいな感情が戻ってきてね羽川それってある種の浄化に近いような感じがしたんだ羽川なんとなく分かるでしょ羽川なら羽川分からなくても頷いてくれるならそれでいいよ羽川その永野のオリジンにニルヴァーナの薄汚い音があるならそれを理解したいと思えたんだよ羽川4/27に五反田でやってた永野出演のライブを別の旧友と脱法ハーブを吸引してから見たんだよ羽川永野でも息出来なくなるくらい笑っちゃったんだけどさ羽川前座に出てた同い年の若手芸人でも今を忘れるくらい笑っちゃったんだよ羽川惨めでもなかったけどなんか疲れちゃったよ羽

川その旧友ってのはね昔一緒に芸人をやろうって言ってたある種の悪友で諸手を上げて降伏したようなもんだったんだけど気分は何故か爽やかだったよ羽川劇場を出てハーブでラリった悪友にいま何がしたいって聞くとね羽川好きな子に告白したいって言うんだよ羽川俺はラリった状態で何がしたいって聞いたつもりだったんだけど彼は人生の心残りを答えたんだ羽川告白したい好きな子なんていないし彼女もいるのにだよ羽川帰りがけシラフに戻りつつある悪友が俺らが芸人になってたら売れてたかなって聞いてきたから彼も俺が劇場で味わった同じ気分だったと思うんだよ羽川その言葉を聞いて後ろ向きに生きる自分たちは哀れだとも思ったけど惨めにもなれなかったんだよ羽川まあそりゃ芸人さんにも日々の悩みがあるのは百も承知だけどね羽川俺たちは欠けたものを注視することでしか生きていけないのかもしれないと思ったんだ羽川だからいつも鬱屈としているしパワーが欲しい

んだろうね羽川
俺はニルヴァーナを聴くより永野で笑うより村上龍の文章に触れるより自分で文章を書いてた頃の方がパワーに満ちていたと確信しているんだ羽川そりゃもちろんパワーに満ちていたから書けていたという側面は否めないだろうね羽川でもプロの誰かの書いた小説なんて読めなかったんだ羽川1ページ読むだけで書きたくて仕方なくなってしまうからだよなんとなく分かるでしょ羽川分からなくても想像出来たらそれでいいよ羽川最近無い頭で振り絞って創作がなんのためにあるかを考えたんだ羽川そんなこと考えずとも書けてたときは書けてたのにね羽川正攻法じゃ無いのは分かってるんだけど縋れるものが欲しかったのかもね羽川なんとなく羽川には創作物が何のためにあるのかという俺の偏見を聞いて欲しかったのかもねこんな長文書いちゃってね羽川創作物はね世界に絶望している人たちにこの世界には面白いものや美しいものが溢れているということを提示する1

つの方法に過ぎないんだと思うんだよ羽川俺はこの無職の期間にそれに向き合おうと思ってるんだ羽川昼過ぎから長々とごめんね羽川良い休日を羽川