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落語「穀倉地帯」

話し手 細目亭ぴっぴ

「兄貴ぃ、ここはどこ?」
「美しい国、瑞穂の国だ」
「国じゃなくって、この景色。瑞穂の国なら稲穂が波打ってるはずでは?」
「見ればわかるだろ。一面の花々」
「花ったって、白いのばっか。せっかくだから赤や黄色もほしいなぁ」
「ばか言ってんじゃないよ。お上は色が違うのを嫌ってんだい。同調こそ美しいって」
「世の中、白い花ばっかだったら、どうちょう」
「こんな時に駄洒落やってんじゃないよ」
「花の前の人の群れはなんなの?」
「居並ぶ白い頭黒い頭、み〜んな黒い服着てるだろ」
「確かに。おおっ! サイレンが鳴ってる。空襲警報?!」
「ほら、一斉に立って目つぶっただろ。いいからお前も黙って目をつぶれ!」
「なんでつぶるんだよぉ」
「いいか。人が亡くなったらサントリーのただ酒呑みが近畿で土地を投げ売りしても、そのせいで自殺者が出ても国民には目をつぶってもらう。」
「じゃ、何かい、目つぶってるといいことあるんか?」
「待ってろ。『三本の矢』って言ってな、大金持ちがいっぱい稼いだら,そのおこぼれの汁がやがてお前や俺に垂れてくるんだい。」
「兄貴ぃ、穀倉地帯みせてやるっていったじゃないか。ここはどこだい?」
「何をカクソウ、国葬地帯。」

(2022/7/24)

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