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シクラメン その3

シクラメン第一号(朱赤)から、続々と葉っぱが出てきている。
あの、買ってからすぐに葉っぱ3枚になってしまったやつである。
葉っぱだけでなく、花芽も次々にあがってきており、飼い主を感動させている。

葉っぱ3枚になった時点で処分しなかったのは、ぶらさがっていたタグに書いてあった「肥料はたっぷりあたえてあるのでシーズンが終わるまで不要です」という主旨の生産者からのメッセージである。いかにも、大事に届けられてきたことが伝わる伝言ではないか。都会はなんと生きづらいことだろう。空気の汚れた都会に連れてこられたこの第一号に出会ったのも何かの縁なのだから、当家において大事バトンを引き継がねばなるまい。

根っこをばちばちに切りつめたシクラメン第二号(白)は、未だ花芽が上がらない。やはり荒治療のショックは大きいとみえる。どっちみち全員を夏越しさせるのは無理なのだから、このまま滅びてもよいと密かに考えてもいる。

さて、新入りのいくつかを紹介したい。

一つ目は、フリル咲のシクラメンである。仮に第三号(フリル)としよう。
この第三号(フリル)は、馴染みの花屋でその日最後のシクラメンの一鉢であった。要するに売れ残りである。花に限らずこの世のものは総じて「いいもの」から売れていくのだから、当然手を出すべきではない存在である。しかし、この鉢は筆者を捉えて離さなかった。そして、以来ずっと部屋の隅で立派に咲き誇ってくれている。第一号(朱赤)とはあまりの違いようである。

二つ目は、香るシクラメンである。仮に第四号(バラの香り)としよう。
有名な歌にあるのは嘘で、シクラメンというのは本来は香りがするものではないらしい。あの歌のせいかは知らないが、香る品種はあとから開発されたという。とってもいい匂い、ずっと嗅いでいたい、という触れ込みを聞いて第四号(香り)を買ってしまったが、実際にはまあまあであった。期待していなかった安価なビオラからとんでもなく良い香りがしたときの感動のほうが大きいものである。

三つ目は、ミニシクラメンである。これが少なくとも4鉢はあるため番号を振ることもできない。ミニだと耐寒性が高いらしく、外に出しているものもある。外は冷凍保存のような状態で成長を止めているが、鮮やかな花もそのまま冷凍状態である。ようやく水やりをサボれる気温になってきたようだ。

やはり花で華やかな室内は良い。正月は花、である。

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