木立性ベゴニア

おしゃれな観葉植物店で、ベゴニアマクラータを購入した。

ずっと欲しいと思い続けながら、イベントやショップで何度も素通りしてきたものだから、それと出会った時も我慢するつもりであったが、近頃なかなか出会う機会も減っていたし、止めてくれと頼んだ友人も止めてくれなかったため、購入することにした。(筆者はいま夏目漱石を読み終えたところである。雨は止んでいる。一文は長くなってしまう。)


個性的な葉っぱの見た目からしていかにもデリケートそうだが、意外にも健康的でよく食べよく寝てよく育つ、素直な植物だった。

いつものように育て方を知らないまま買ったものだから、自宅で植え替えまで終えてから育て方を調べていると、出会ったのが桐島かれんさんの動画だった。かれんさんも動画のなかで見た目の割に意外に強いという感想を述べておられた。レックスベゴニアのほうがちょっと難しい、という意見には筆者も同感である。

筆者は桐島かれんさんのことは存じ上げなかったのだが、動画での居住まいやセンスがあまりに美しく、マクラータのことはそこそこにかれんさんのことを勉強し始めた。すると、とんでもない共通点に出会うことになった。もちろん筆者との共通点ではない。


すでに述べるように、このNoteはカレル・チャペックの『園芸家12ヶ月』を読んでも平常心を保っていた私という一個の他者が、いとうせいこうの『ボタニカル・ライフ』を読んで「俺も何か書きたい」という衝動に駆られている私的な文章であるが、そのいとうせいこう師が、「桐島かれんという人」という文章を1990年に書いていたのである!(師の『全文掲載』という書物の203ページで読むことができます。)

園芸について文章で笑わせてくれる師と、映像で楽しませてくれる桐島さんの交差点を発見した瞬間は、ああ私という一個の他者は同じ周波数に惹かれたのだ、と納得がいったような嬉しさが込み上げた。似て非なる二つの植物が実は同じ科であったことを発見したときの喜びにも似た感覚である。

その後お母様である桐島洋子さんの著書もいくつか読み終え、当時の日本社会でどんな存在だったのか思いを馳せた。


ここでいきなり木立性ベゴニアの話に戻ろう。

ベゴニア・マクラータが強いことは述べたが、我が家にはもう一種類木立性ベゴニアがいる。ベゴニア・ベネズエラである。漱石の『猫』のごとくまだ名前がないらしく、出身地で呼ばれて定着している不憫なやつである。マクラータは排水性のよい土に植え替えたが、ベネズエラは買った時の水苔とビニールポットのままだ。それでも、あまり深く考えることなく同じようなずぼら管理で育つ。なぜか冬のあいだも芽吹き背を伸ばしぐんぐん成長してきた。我が家には支柱という代物がないので、胡蝶蘭についているあの棒とクリップを使いまわしてお茶を濁している体たらくだ。これから暖かくなったらさすがに剪定していくしかないだろう。挿し木も簡単と聞く。

憧れは、植物園で見た、地上に近い部分が完全に木になった木立性ベゴニアである。あそこまで育てば支柱もいらないようだった。あとは、こんな見た目なのに可愛いらしい花も咲くというので、それを見ること。


球根ベゴニアとレックスベゴニアはここまで簡単ではなかった。木立性ベゴニア、おすすめである。

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