アンスリウム その2

とあるカフェのレジの側に、立派なアンスリウムがいた。

よく見かける赤の仏炎苞の普及種だが、幹が木質化して見上げるほどに伸び、伸びた先のほうからお馴染みのアンスリウムの姿が再度始まっている。樹になったアンスリウムとでも言おうか。アンスリウムは樹に着生する植物と聞いているが、このお化けアンスリウムは、無いのなら作ってみよう自前で樹、みたいな、自分で自分に着生する方法を見出した、植物の生存パワーの権化みたいなやつである。カフェ側も、支柱をしたり幹を束ねたりして木質化を支持していて、この株は仕立て直しなど絶対にしないという覚悟を滲ませている。

お昼時の混み合ったカフェで、座席に着く気もなくアンスリウムに見惚れている客は他におらず、まじまじと観察していると、通りがかりの店員さんが「すごいでしょう、樹齢五年ぐらいです。放ったらかしで、月2回くらい水をやっているだけなのに、こうして咲いてくれるんですよ。」と嬉しそうに教えてくれた。確かに多くの葉は埃をかぶり、鉢の中の土も痩せていて、丁寧な世話を受けているようにはみえない。他の店員さんは誰も鉢植えの存在など眼中にないので、もっぱらこの方が忙しい本業の隙間に世話を担当しているのだろう。

こんな状態でなぜ咲くのか。我が家のアンスリウムはもっと良い待遇を受けているはずなのに、絶対に咲かない。以前にも綴ったように筆者はこれまでアンスリウムのために様々な場所へアドバイスを求め歩き、咲かせるために日当たり、置き場所、用土、肥料、水やり頻度、あらゆることを試してきた。しかしひ弱に咲いた一輪しかまだ成功をみていない。なぜこのカフェのお化けに咲いて我が家のサラブレッドたちには咲かないのか。


ここでふと気づいたが、筆者は木酢液を愛用している。

アンスリウムに限らず我が家のほとんどの植物や土壌改良に活用し、みなすこぶる調子がいい。外敵からの大きな被害なくベランダーを続けられているのは間違いなく木酢液のおかげである、と信じている。

木酢液はそれ自体は酸性だが、散布すると土壌でアルカリ性にかわるという、人間が酢を体内に取り込むときと同じ反応をする。そんなもの人間だろうと植物だろうと健康に良いに決まっている。しかし、アンスリウムは酸性寄りの用土を好むらしいのである。

試しに、いくつかのアンスリウムの鉢には木酢液を撒き散らすのを泣く泣くやめてみよう。

そう考えさせられた、カフェのお化けアンスリウムとの出会いであった。

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